「最近、子どもが学校行きたくないと言っています」
発達障害のあるお子さんを持つ保護者さんから、こんな相談をよく受けます。
今まで学校へ行けていたのに、突然の「学校行きたくない」という言葉。
どういった原因があり、どのように対応をしていけば良いのでしょうか?
Branchを利用されているご家庭の事例を紹介しながら、発達障害のあるお子さんに「学校行きたくない」と言われた際に考えるべきこととその後の対応についてお話します。
「学校行きたくない」という発達障害のお子さんは、どんなことに困っているのか
発達障害の有無にかかわらず、不登校はどんな子どもにも起こりうることです。
また、なにかひとつの出来事がきっかけとなることもあれば、さまざまな経験が積み重なって学校にいけなくなるということもあります。
その上で、発達障害のある子どもが不登校になる要因・きっかけとしては、主に以下のようなものが挙げられます。
- 集団行動、ルールへの適応の困難さ
- 環境の変化などへの適応の困難さ
- 学習の遅れ、困難さ
- 先生や他の子どもとの、対人関係の困難さ
- その他、感覚過敏などの特性から生じる困難さなど
以下では、Branchに寄せられた具体的なエピソードを紹介します。
「教室がザワザワして気持ち悪い。頭が痛い」
学校に行く事が大好きだと思ってた息子ですが、学校へ行くと「教室がザワザワして気持ち悪い。頭が痛い。」と言い、給食は食べれず机に伏せている状態が続き、早退や欠席が多くなりました。
最初はまさか学校が合わないとは思いませんでした。
でも思い当たる事はありました。
まずコロナ明けで今までのように友達とワイワイ近寄って遊べなかったり、コロナで普通が変わってしまった事、コロナ休校中に家の前で利き手を骨折して、あまりの痛さと辛さを知って、ギプスをしながらの登校が大変だったこと。
さらに、今思うとアトピーで元々つらい体、汗をかくとかゆくてかゆくて仕方ない体で、他の子よりも学校に行くだけでしんどい思いをしてたんだよなあ、と感じそれも大きな原因だと思っています。
ギプスの中も蒸れてかゆく、食欲もなく「頭痛がする」か、イライラするか、どちらか。
この頃は人が変わった様に物に当たったり荒れていました。
友達が他の子を叩いているのを見て怖くなった
現在、息子は小学4年生です。
小学2年生の1学期に、「学校行きたくない」となり、その後、最初の1ヶ月間は学校を休みました。
原因はなかなか話してくれなかったのですが、じっくり聞いてみると、友達が他の子を叩いているのを見て怖くなったり、勉強が難しくて自信をなくしてしまったりしたようです。
大きな困りごとがあるわけではないのですが、癇癪があったり、不安を感じたりしてしまうことが多く、学校に行きたくない気持ちになって母親から離れられない、などの課題がありました。
「学校で吐いてしまったらどうしよう」という不安
小学校1年生の12月の時に、習い事中に吐いてしまったことがあり、それがきっかけで「学校で吐いてしまったらどうしよう」と不安になり、学校に行けなくなりました。
2年生になっても、学校には当然なじめず。担任の先生に「給食が気持ち悪いので保健室で休みたい」と言っても「大丈夫だから」と信じてもらえなかったようです
上記のような理由以外にも、発達障害のお子さんにとって学校という集団生活は不安やストレスでいっぱいです。
以下の記事でも詳しく解説しているので、ご参考にしてください。
子どもが「学校行きたくない」と言ったときには、すでに深刻な状態になっていることが多い
信州大医学部の本田秀夫先生はこのようにおっしゃっています。
登校渋りっていうのは子どもさんにとってはもう「学校に行きたくない」の最終段階なんです。親御さんからすると問題の始まりに見えるけれど、これは子どもさんから見ると問題の最終段階で、「行かなくなった」というのは「“学校に行く自分”っていう人生を捨てた」という、もう最後の段階です。正直、この段階から頑張ってなだめすかして行かせてたらそのうち行けるようになったっていう人はあまりいないので、無理なさらない方が良い気がしますね。
保護者の方からすると突然言われたように感じてしまう「学校行きたくない」の言葉。
ですが子ども本人にとっては、「今まで言葉に出していなかっただけで、辛い葛藤を経てやっとお母さん・お父さんに打ち明けている」ということも少なくありません。
「学校行きたくない」と言い出した時点で、すでにいっぱいいっぱいの状態である可能性が高いお子さんに対して、更に登校刺激を続けると、本人のメンタルが更に悪化して二次障害につながる可能性があります。
登校の無理強いはやめましょう。
対応の第1ステップ:刺激を避けて、まずは原因を見極める
では、お子さんが「学校行きたくない」と言い出したときに、保護者はどう考え、どのように対応すれば良いのでしょうか。
記事の後半では、具体的な対応方法についてご紹介していきます。
まず、最初のステップでは何よりも登校刺激を避けることが大事です。
その上で、子どもの話から、登校しぶりの原因を見極めましょう。
- 周囲の雑音がストレスだった?
- 実はいじめにあっていた?
- 勉強についていけなくなったのが一番の原因?
- 給食が嫌だった?(←実はとても多い)
ただしここでも、お子さんのメンタルには気を配ってください。
「原因はなに?」「なんで学校行けないの!?」と強い口調で聞いてしまうと、「やっぱりママは学校行ってほしいんだな」とお子さんがプレッシャーを感じてしまい、結局は登校刺激してしまうことになりかねません。
対応の第2ステップ:登校しぶりの原因を取り除く、環境調整の方法を検討・相談する
お子さんが学校で過ごすのがしんどくなってしまう原因が分かれば、学校に戻れるかどうかは確実ではないですが、
原因を取り除いたりストレスを軽減するための方法(合理的配慮)について、少なくとも学校側と相談・協議しやすくはなります。
(完全不登校になるお子さんは、ほとんどこの「配慮依頼」を断られて不登校になっていますが、中には学校側が真摯に配慮をしてくださる場合もあります)
- 周囲の雑音が気になってしまうのであれば、イヤーマフを付けて授業に出られるようにできないか?
- 実はいじめがあったのであればいったん休み、進級などのタイミングでクラスを分けてもらうことはできないか?
- 勉強についていけなくなったのであれば、自主学習に切り替えたり、宿題やテストの進行具合に配慮頂いたり、通級に切り替えることはできないか?
- 給食が嫌だったのであれば、弁当にかえてもらったり、食べなくても良いようにできないか?
上記のように、原因を取り除いたり、ストレスを和らげる方法は何があるかを検討していきましょう。
原因と対策をこちらから具体的に提案することができれば、学校との相談をスムーズに進めやすくなります。
この間もお子さんに登校刺激をせず、まずは安心して休息を取れるようにしてあげてください。
Branchでは、同じように「学校行きたくない」という気持ちを抱え、家族以外の人との関わりが減ってしまった不登校のお子さま達が自分の「好きなこと」をきっかけに安心できる居場所や、友達ができるようなサービスを運営しております。
※給食に関する学校への配慮依頼方法については別途記事がありますので、ご覧ください。
学校での対応事例:教室内にパーテーション、個人ブースも作成
以前、Branchで保護者さんにインタビューした際、下記のようなお話も伺えました。
発達障害のあるお子さんが「学校行きたくない」となったときに、先生が本人と丁寧に相談し、学校で可能な環境調整を試みてくださった事例です。
たとえばこんなやり取りです。
「ゲント君、なんで教室いられないのかな」
「ぼくね、まわりのみんなの視線が気になる。みんなから見えないようにパーティション置いてもらえたらもっと集中できると思う」
「じゃあ、5年生にもパーティション使いたいって言ってる子がいるから、一緒に注文しようか」
他にも、脱走・抜け出しがあった時に
「ゲント君、学校の外に出て誘拐されたら大変でしょ。どうしたら学校にいられる?」
「図書室と保健室と校長室だけだと飽きちゃうし、先生いないときに行くとこがない」
「そしたら、窓から校庭が見える場所に机を置いてブースをつくるから、いつでも使っていいよ。教室にいられないときは、個人ブースか、図書室、保健室、校長室、このどこかに行きますって、担任の先生に言えばいいから」
っていうふうにしてくれて。
このような話は他にもたくさんあって、配慮のお願いを丁寧にすればその課題を解決してくださる場合もあります。
医師にも子どもの状況を共有し、対応方針について相談を
お子さんに発達障害と診断が下りているのであれば、すでに医療機関とつながっていることでしょう。
主治医の先生に「子どもが学校に行きたくないと行っていて、現在家庭で休息中です。今後どのようにしていけばいいでしょうか?」と素直に聞いてみるのも手です。
発達障害のお子さんの多くが不登校経験をするので、発達障害のお子さんを多く見ている先生は、不登校のお子さんもたくさん見てきています。
どんな困りごとがあって、どんな原因がありそうか、家庭内でどのように接していけば良いか、先生にアドバイスをもらえる場合もあります。
また、「生活や通院・通所に支障をきたしており、自宅での看護・リハビリが必要だ」と医師が判断した場合は訪問看護を依頼するための指示書を出してくださる場合もあります。
※訪問看護の仕組みや体験談は過去に記事にしておりますので、下記をご確認ください。
学校とのコミュニケーションで注意すること
ここまで述べてきたように、「学校行きたくない」とお子さんが言い出したときには、無理な登校刺激は避け、原因を取り除くための環境調整について学校と交渉することが大切です。
この記事でご紹介したBranchのお子さんの事例のように、学校側が発達障害や不登校のお子さんのサポート経験が豊富で、適切な対応をしてもらえる場合ももちろんありますが、残念ながらそうではない場合も少なくありません。
登校しぶりが起こった際に学校側に状況を話すと「少し休んだら学校に戻ってこれますよ」「学校にいる時は元気に楽しそうにしてるので大丈夫ですよ」など、深刻にとらえてもらえず、かえって登校刺激をされてしまったという保護者さんのお話もよく聞きます。
学校側の見解には耳を傾けつつも、今後の方針については、お子さん本人の意見や体調を重視して、主治医の方のアドバイスも参考にしながら決めていくと良いと思います。
言葉にすがらないようにした方がいいと思います。スクールカウンセラーさんや先生の「学校にくれば元気ですよ」や本人の「明日は行く」などの言葉ではなく、目の前の子供から発せられる行動や目つきに「行きたくない」が溢れていたら、一旦休ませてあげてほしいです。
Branch保護者さんからのアンケートより
もし担任の先生から「学校では楽しそう」「特に困った様子は見られません」と言われても、一度疑ってもいいのかなと思います。本人はそういうフリをしているかもしれないから。
Branch保護者さんからのアンケートより
発達障害のあるお子さんの「学校行きたくない」への対応まとめ
発達障害のあるお子さんに「学校行きたくない」と言われた際の対応策について、ここまでお話してきた内容をまとめます。
- 登校刺激をせず、まずは本人の様子を確認
- 本人の意思を確認できそうな様子であれば、学校に行きたくない理由を優しく丁寧に聞いてみる
- 学校に行きたくない理由が、学校内での環境調整(合理的配慮)で改善できそうであれば具体的に依頼する
- その際、主治医にも相談して意見を求めながら進める
ここまでやってみて「やっぱりうちの子は学校に戻るのは難しいな、時間がかかるな」となったら、ホームスクーリングなど、学校に通う以外の方法で、お子さんの学びをサポートする方法を考えていきましょう。
子どもを支える、ママ自身のケアも忘れないで
最後に、これを読んでくださっている保護者の方、特に、Branchのようなサービスにご相談を寄せてくださることが多い、お母さまへ向けたメッセージです。
「学校に行きたくない」とお子さんに言われたとき、保護者ご自身も、つらい思いをされたと思います。
多かれ少なかれ「学校へはみんな行くものだ」という社会通念の中で生きてきて、突然わが子に「学校行きたくない」と言われると、ショックを受けることも無理はありません。
私自身が小・中学校という場所に苦痛はあったので、子供の気持ちは想像しやすかったです。それでも混乱してすごく落ち込んでしまい、最初は「学校は行かなくちゃいけない所だよ」と言いました。けれど、頭痛・腹痛・不安感もひどかったので「学校は行った方がいいと思うけど、体と心を壊しても行かなきゃというのは違うと思う。ただ、お父さんもお母さんも学校に行って大人になったから、行かない場合どうすればいいかわからない」と親の気持ちを伝えました。
「学校行きたくない」と子どもが言ったとき、どうする?先輩ママ・パパの体験談とアドバイス集
このご両親のようにほとんどの保護者の方は不登校を経験せず、通学して育っています。正直なところ「今後どうなるか分からない」ですよね。
見通しが立たないため、一層不安になります。
更に祖父母や親戚の方に「あなたが甘やかすからよ」と言われたり、お父さんから「お前の育て方が悪いんだ」と言われて、お母さんが孤独になり自分を追い詰める話も本当によく聞きます。
悩みを抱え込んで保護者さん自身がつらくなると、子どもにもプレッシャーになるんですよね。
誰が悪いわけでもない。すでに「学校行きたくない」と言ったお子さんも、色々と調べてこの記事を読んでいるお母さんも、今まで十分がんばってます。
どうか、ご自身を責めないでくださいね。
最後にBranchの保護者さんからのメッセージで締めさせていただきます。
息子は「学校に行きたくない」と言いだせず、身体症状での訴えでした。それを言いだせないような緊張感のある親子関係でした。素直に「行きたくない」と言葉に出してくれたのなら、それは素晴らしいことです。安心して本音を言える家族関係に自信を持ってほしいです。
「学校行きたくない」と、子どもに言われたら、まずは「休んでいいよ。」と言ってよいと思います。子どもの話を沢山聞いてあげて、子どもの今の気持ちを知り、寄り添ってあげるのが一番だと思います。しんどい状態が続くと二次障害になり、回復に時間が掛かり、家族で疲弊してしまいます。
義務教育まで(中3まで)は、学校へ一度も行かなくても、卒業出来ます。それまでに、心身を整え、学校へ戻りたければ戻り、学校が合わなければ別ルート(通信制高校や定時制高校、高校卒業資格を取る)を考える。しんどい時は、家庭内でおさめず、色々なサポート(スクールカウンセラー、医療、福祉、親の会など)を活用して不安を減らすのがよいかと思います。
発達障害や不登校の子の「友だちができる。安心できる居場所」とは?
Branchでも1つの解決策として、不登校・発達障害があるお子さま向けの「学校外で友だちができる」Branchコミュニティを運営していて、以下のような特徴があります。
- 同じように「学校行きたくない」という気持ちを抱え、家族以外の人との関わりが減ってしまった不登校のお子さま達が自分の「好きなこと」をきっかけに安心できる居場所や、友達ができるようなサービス。
- NHKや日テレなど多くのメディアにも紹介され、本田秀夫先生との対談や、厚生労働省のイベントの登壇実績もあり、サービス継続率は約95%以上。
- 小学校低学年のお子さまはもちろん、どんな子でも楽しく参加できるようにスタッフがお子さま一人ひとりに寄り添ったサポートを徹底。
Branchコミュニティは1ヶ月無料体験ができるので、ご利用を迷われている方は一度お気軽に無料面談予約をお申し込みください。
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