お子さんからの突然の「学校行きたくない」
保護者の方々にとって、これほど動揺する言葉もなかなか無いと思います。
Branchではこれまで「登校渋り」について様々な角度から記事を書いてきました。
今回は、小学校高学年での「登校渋り」についてまとめていきます。
高学年では、子ども本人が登校渋りの理由を「言語化」できることが多い
これまでのBranchでのアンケート結果では、登校渋りはお子さんが小学校低学年の頃に起こることが多かったのですが、低学年ではお子さんが「理由を言語化するのが難しい」ため、学校への環境調整の依頼に難航する・時間がかかる傾向があります。
一方、小学校高学年のお子さんの場合は、登校渋りの理由がはっきりしていて、本人も言語化できる場合が多いです(記事の後半に記載しますが、思春期特有の心情から、親に理由を話したがらないないこともあります)。
では、小学校高学年のお子さんの登校渋りにはどんな理由があるのでしょうか。
1. 勉強について行けない、勉強がプレッシャーになっている
この年代で多いのが勉強です。低学年ではそこまで大きな理由になりにくいのですが、中学受験が見えてきて、勉強を本格的に始めるお友だちが増えてくるなど、環境の変化がプレッシャーになってきます。
学年が上がるにつれて、授業そのものの難易度が上がってきたり、宿題の量も増えてきたりと、勉強自体の負担があがってくる時期でもあります。また学校によっては、授業時間が増える場合もあります。
この「勉強がプレッシャー」であるという理由により「学校に行きたくない」となる場合が多いのが高学年の特徴です。
2. 人間関係、いじめ、異質なものの排除
また、人間関係が理由で行き渋りが始まりやすいのも、小学校高学年以降の特徴でしょう。
「仲良しグループ」というものが明確にでき始め、それゆえ「このグループに所属し続けるにはどうすればよいか?」という思考が生まれ始めます。
グループへの所属から外されたり、今まで共有してもらっていた話が自分にだけ届かなかったり、といった経験がお子さんのストレスになります。
また、明確に「いじめ」が登校渋りの原因となるのもこの年代からです。
悪質ないじめももちろんありますが、周囲は「ただのいじりだった」というつもりでも、本人は「いじめられた」と感じて悩んでしまうことも非常に多いです。
いつもと違う服を着ている、1人だけ馴染みのない服装で学校に来た、清潔感がない、生活環境がみんなと違う、など些細な違いを「いじり」のつもりで指摘するなど、「異質なものを排除しようとする行動」が生まれだす年代です。
また、この年代は、いわゆる「お受験組」とそうでない子どもたちでグループが分かれやすい年代でもあります。仲の良かった子がお受験組になって会話が合わなくなるといった、周囲の子たちと関係の変化も、つらくなる理由の一つです。
3. 周りの心情の変化をセンシティブに捉える
学年が上がって発達するにつれ、いじめや排除を受けているお子さん本人も、そうした「排除プレッシャー」を感じやすくなっていきます。
仲良しグループからの排除、クラスの文化に馴染めない、本人は悪気がないのに「あいつ空気読めないな」と言われる、そういった異質なものへの排除プレッシャーを本人が自覚して、ますます「学校へ行きたくないな」となってしまうのです。
対応:子ども本人が話せるようになってるので、原因や対応方法を聞く
先に書いたように、高学年では子ども本人が登校渋りの理由を言語化できるようになっていることが多いので、まずは「お子さん本人に聞くこと」が対応の第一歩です。また、原因のヒアリングと合わせて、「今後どうして行きたいか」についても、お子さんの希望を聞きながら話し合うと良いでしょう。
本人に無理をさせないのは当然として、学校の先生やスクールカウンセラーなどに相談しつつ、原因に応じた対応方法を考えていってください。
原因と対応の例)
- 勉強が登校渋りの理由なのであれば、宿題の負荷を下げてもらい、授業だけでも出られるようにして、負荷を下げつつ学習機会を失わないようにする。
- 人間関係や本人の心情が理由なのであれば、進級・進学して人間関係が変われば行けそうなか、進級・進学してからもダメそうなのかなどを見極めて通学・復学の方針を検討する。
話し合いの結果「学校へは行かない」となったけれど、本人の学習意欲はある場合は、学習機会は無くさないようご家庭と学校で連携することが大切です。
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不登校時の学習機会確保の例)
- オンライン教材を使用して家庭で勉強できるようにする。
- プリントなどで学校の授業進度だけ教えてもらい、オンライン教材で学校の進度に応じた学習をする。
特に高学年の学習は、遅れが大きくなるとリカバリーが難しくなります。学習に追いつけていないこと自体が本人のプレッシャーになり、ますますリカバリーが難しくなってしまう、ということも起こりえますきので、不登校直後にまだ学習意欲があるようであれば、なるべくご家庭で学習機会を作れるように工夫していきましょう。
ただし注意が必要なのは、「学習に拒否感がある場合」です。
この場合は無理に勉強させようとすると、ますます拒否感が強くなり、それ以降長いこと学習意欲が戻らない、という事態を招きかねません。お子さんのメンタルが落ち着き、学習意欲が戻るまでは、保護者の方はゆっくり見守るようにしてください。
お子さんによっては、学習意欲がずっと出てこない場合もあります。それでも「将来のために勉強して!」というようなことは言わずに、何もせずに見守るようにしましょう。将来のためというのであれば、学校の勉強よりも、日常生活全般のスキルが身につくように、家庭で一緒に学んでいく方が優先度が高い場合も少なくありません。
思春期ゆえの対応の難しさも
ここまで、登校渋りの「理由が分かる」「本人が自分で話せる」という前提で対応方法を紹介してきました。しかし、初めに述べたように「思春期特有の心情により、親や大人に理由を話したがらない」という場合も多々あります。
親としては「ただの反抗期で学校に行かないんじゃないか!?」、「なんの理由もなく学校に行かないのは不安」という気持ちになると思います。
もし親以外の人で、お子さんが心を許している人がいるようであれば、その人に理由をさり気なく聞いてもらうのは一つの手です。スクールカウンセラーのように学校側の方には話さない場合もありますので、親戚のお兄さん・お姉さんであったり、近所の友だち、祖父母、など心を許して何でも話しているような人間関係が育まれていたら、そういった人たちに協力してもらえるといいですね。
ただ、色んな方法を使っても理由がわからない、話してもらえない、ということももちろんありえます。その場合も本人を責めず、「まずは休もうか」などと、登校刺激をしないように声をかけ、本人の意思を尊重してあげてください。
思春期も始まり、親としては子どもの心情が分かりづらく難しい局面かと思います。
また「他の子は受験勉強頑張ってるのに、うちの子は……」と、周囲と比べて我が子の勉強や将来のことを心配してしまうこともあると思います。
他の記事でも書いていますが「お子さんが学校に行きたくないと言い出すのは、たくさんの過程を経た最終段階である」ということを忘れず、まずは一度お子さんの気持ちに寄り添って、休ませてあげてください。
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