お子さんの癇癪や激しい怒りの表現に悩まされている保護者の方は多いのではないでしょうか?
怒りの根底にある本当の感情を見つめてそれを適切に表現することで、癇癪とさよならできるかもしれません。
今回は、怒りの気持ちを適切にコントロールする方法「アンガーマネジメント」について紹介します。
アンガーマネジメントとは
アンガーマネジメントとは、怒りやイライラといった感情を適切にコントロールすることです。
「怒らない」ことではなく「適切に怒りを表現する」ことを目的としています。
「1970年代にアメリカで生まれたとされている怒りの感情と上手に付き合うための心理教育、心理トレーニングです。
怒らないことを目的とするのではなく、怒る必要のあることは上手に怒れ、怒る必要のないことは怒らなくて済むようになることを目標としています。」
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会
アンガーマネジメントによるメリット
子どもが自分でアンガーマネジメントできるようになると、どのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは以下の3つのメリットについて説明します。
- 良好な人間関係、親子関係が築ける
- 自己肯定感が高まる
- 適切に怒りを表現することで、自分の尊厳を守り信念や感情を相手に伝えられるようになる
①良好な人間関係、親子関係が築ける
いちばんのメリットとして、「適切な人間関係が築けるようになること」が挙げられます。
怒りにまかせて暴言を吐いてしまったり、むやみに癇癪を起すことが続いてしまうと、本人と周囲の人間関係に溝が生まれてしまいます。それは親子関係も同様です。
アンガーマネジメントができるようになると、自分の気持ちを落ち着いて表現できるようになるため、円滑な人間関係が築けるようになります。
②自己肯定感が高まる
イライラしたり癇癪を起したりすることは、子ども自身にとっても辛いことです。
特に、発達に特性にあるお子さんはこだわりや予期不安から癇癪を起しがちです。
自分で気持ちをコントロールできるようになることで、自信が付き、子ども自身の自己肯定感が高まります。
③適切に怒りを表現することで、自分の尊厳を守り信念や感情を相手に伝えられるようになる
アンガーマネジメントはネガティブな感情を適切に表現することでもあります。
怒りを封じ込めるのではなく、不快な気持ちや怒りを落ち着いて表現することにより、自分の尊厳を守りつつ適切に相手に伝えることができるようになります。
アンガーマネジメントの第一歩
「怒り」の向こうにある一次感情に目を向ける
さて、そもそも「怒り」とは一体何なのでしょう。
「嫌われる勇気」で著名な心理学者アドラーの考えに基づくと、「怒り」は「二次感情」であると述べられています。
つまり、怒りの根底には「悲しい」「悔しい」「嫌だ」といった元となる感情(一次感情)が隠されているのです。
アンガーマネジメントの第一歩として、この「一次感情」を正しく認識することが大切になってきます。
悲しい気持ちは「悲しい」、悔しい気持ちは「悔しい」と、そのまま言葉で表現できるようになることを目指してみましょう。
子どもがアンガーマネジメントできるようになるための方法
では、実際にアンガーマネジメントができるようになるには、どうしたらいいのでしょう。
その方法について考えていきたいと思います。
子どもの気持ちを代弁する
子どもは気持ちの言語化がまだうまくできません。
嫌な気持ちを感じていても、その気持ちをうまく言葉で表現できないため、それが怒りや癇癪といった形で現れます。
よって、保護者や周囲の大人が子どもの気持ちを代弁することが大切になってきます。
お子さんの様子をしっかり観察し、
- 「(原因となったこと)が嫌だったんだね」
- 「(原因となったこと)と思って悲しかったんだね」
- 「悔しかったんだね」
などと、声をかけてみてください。
気持ちの代弁を続けていくうちに、お子さん自身が自分の感情に名前を付けることができるようになり、その気持ちを言葉で表せるようになります。
アサーションで気持ちを伝える
自分の気持ちを伝える効果的な方法として、「I メッセージ(アイ・メッセージ)」があります。
僕は悲しい
「私は悔しい」
と言うように、主語を「I」=自分で伝える方法です。
これは「アサーション」という自分も相手も大切にする気持ちの伝え方です。
「You」=「あなた」、つまり相手を主語にすると、どうしても相手を責めるような表現になりがちですが、「I」=自分を主語にして伝えると、相手を批判せずに、でもはっきりと自分の気持ちを伝えることができます。
You メッセージ は避けよう
例えば… 「なんであなたは大きい声で怒鳴るの?」
I メッセージ を増やそう
例えば… 「大きい声で怒鳴られると、私は悲しい」
言葉で自分の一次感情表現ができるようになることで、お子さん自身が安心し、過度な怒りや癇癪は減っていきます。
共感する
気持ちの代弁と同時に、お子さんの気持ちに共感することも効果的です。
「嫌だったね」
「それは悔しいね」
などと、共感の言葉をかけると、お子さんは自分の気持ちを受け止めてもらえたと感じ、落ち着くことができます。
感情をレベル化して表現する
怒りの度合いをレベルで表現し、子ども自身がそれを自覚できるようにすることも効果的です。
例えば1~5段階に怒りレベルを設定し、都度子どもに現在の怒りレベルはどれくらいかを確認します。
- レベル1 ▶ 怒りをほとんど感じない状態
- レベル2 ▶ 落ち着かない気持ちが芽生える状態
- レベル3 ▶ 落ち着かない気持ちを自覚し始める状態
- レベル4 ▶ 不安やイライラが言葉や行動として表出する状態
- レベル5 ▶ 怒りマックスで癇癪を起す状態
この中の、レベル3になったら、クールダウン(その場を離れる、深呼吸する等)を促すようにします。
声掛けを続けていく中で、お子さん自身が自分の状態を認識できるようになり、その後どのように行動したらよいか判断できるようになります。
怒りの気持ちが湧き上がってきたら6秒数える
激しい怒りは最長でも6秒しか続かないと言われています。
その6秒を乗り切ることで、気持ちの爆発を防ぐ方法です。
怒りの気持ちが湧いてきたら6秒数え、怒りがピークに達することを防ぎます。
その場を離れる
その場を離れ、怒りの原因となっているものから距離をとることも有効な手段です。
感情のレベル化や、言語化ができるようになってくると、お子さん自身が自分の気持ちが落ち着かなくなってきたことを自覚して、自らその場を離れることで気持ちの揺らぎに対処するようになることもあります。
外出先などでは、お子さんの安全を見守った状態で行ってください。
怒りを誘発する原因を遠ざける
いつも同じような状況の時に癇癪を起すのであれば、その原因を遠ざけることで癇癪を未然に防ぐことができます。
お子さんの普段の様子をよく観察すると、似たようなシチュエーションで癇癪を起こしていることがあります。
その状況になることを避けるだけでも、癇癪を防ぐことができます。
- 急な予定変更が癇癪のトリガーになる場合は、なるべく予定通りに物事を進める
- 見通しの立たなさ(どれくらいの時間がかかるか分からない、料理に使われている材料が分からない)がトリガーのことが多ければ、事前に具体的に伝えておく
など、お子さんが安心できる環境づくりをすると良いでしょう。
また、期待通りの展開にならなかったとしても「やりなおせる」「怒らなくても大丈夫」などの声掛けを、事前にしておくことも効果があります。
深呼吸や絵本など、その子に合わせた気分転換をはかる
深呼吸する、ほかの遊びに気を逸らす、絵本を読む など、落ち着く方法はお子さんによって様々です。
過去に怒りをしずめることができた方法があれば、それが成功体験としてお子さんの記憶に残っていることもあります。
お子さんのこれまでを振り返ると、お子さん独自の方法が見つかるかもしれません。
怒りも大切な感情なので否定しない
癇癪や過度な怒りは、自分も相手も傷つけてしまいます。
ただし、ここで気をつけてほしいのは怒りも大切な感情であるということです。
怒りはお子さん自身が傷つけられたり、不快な思いをしたときに、お子さん自身の尊厳をまもるために必要な感情でもあります。
アンガーマネジメントは怒らないことを目指すのではなく、怒りを適切にコントロールすることです。
お子さんの怒りの気持ち自体は否定することなく、受け止めることが大切です。
親の体験談:子どもが癇癪を起こした時、して良かった対応とは?
Branchユーザーに、子どもの癇癪にまつわる質問をしてみました。
お子さんが癇癪を起こした時、して良かった対応があれば教えてください。
また、以前より癇癪の回数が減っていった場合、その原因は何にあると思いますか?
子どもが落ち着いている時に一緒に散歩しながら、物に当たったり暴力は私自身もつらいということを伝えたり、怒りの感情が出た時は自分の部屋に行って気持ちの切り替えをしてみようなどと話しました。
それで自分で切り替えられることもありましたが、今振り返ると、子ども自身はストレスや不安でいっぱいでどうすることもできない感情を抱えていたのに、それを制御するよう求めていたのは酷だったのかもしれないなと思います。
よく言われるスルーしたりということは当時は不可能でした。
やはり、本人のストレスや不安を減らすことに焦点をあてることが長い目では必要だと思います。
その後は元気になったからか、中学年になった今は癇癪はほぼありません。
たまに暴言をはいてきたときは、大人な対応で笑顔で受け流す、もしくは感情を無にして無視するのがベストな対応だと思うに至りました。
癇癪が減ったのは薬の服用の効果が大きいかなと思っています。
親としてはなるべく子どもの感情に引きずられないように冷静な姿勢でいることを心がけています。なかなか難しいですが。。
距離をとる(こちらから火に油を注がない)。
落ち着いてから、癇癪の理由を一緒に振り返る。
癇癪を起こしている間に、私自身が巻き込まれて、子供に対して怒鳴り返したり責めたりしないように、アンガーログをとっていた(癇癪が起こる前の出来事、本人や周囲のセリフ、どういった対応をしたか、なにをしたら落ち着いたかなどを記録する)。
記録をとる間は、客観的に子供を見ることができるので、巻き込まれ防止に役立った。あとで振り返る時にも記録が参考になった。
「それは怒れるよね」「わかったよ」と親が共感力を高めていくにつれて、癇癪は減ってきた(癇癪の時間が短くなった)。
本人が、怒ってもいいんだ、と思えるようになったのかもしれない。
あれこれ解釈して本人に説明するのを控えるようにしたことも、良い方向に働いたかも。成長につれて、本人が対処やスルー力を身につけた。
癇癪に対しては、そっとしておく。
本人のペースや、話をきいて許容範囲を広げた。
おすすめ書籍
Branchオンラインコミュニティで、話題に挙がった書籍をご紹介します。
- イラスト版 子どものアンガーマネジメント – 合同出版
- もうふりまわされない! 怒り・イライラ – 株式会社日本図書センター
- だいじょうぶ 自分でできる怒りの消火法ワークブック – 株式会社 明石書店
- おこりんぼうさんのペアレント・トレーニング – 株式会社 明石書店
さいごに:お手本通りにいかない日々に寄せて
今回、怒りの感情とは何かをひも解きつつ、アンガーマネジメントができるようになる方法について紹介してきました。
癇癪や激しい怒りはお子さんだけでなく、保護者さんも疲弊してしまいます。
良好な親子関係を築き、穏やかな日常を送るためにも、アンガーマネジメントは役立ちます。
ですが、その道のりは決して簡単なものではないことを、きっとここまで読んでくださった方は身に染みて分かってらっしゃるかと思います。
ただでさえ、自分の思い通りにも、育児書のお手本通りにもいかないものが育児です。
そのうえ、子ども自身がコントロールできない怒りについて、保護者としてどうサポートしていいのか。
この記事を書いている私自身、頻発する子どもの癇癪に長い間悩んできました。
色々、試行錯誤を繰り返す中で、私たち親子に合ってたのは、アサーションと怒りのレベル化でした。一方で、どうしても難しかったのは6秒間待つことでした。6秒数えている間に次々に別のトラブルが起こっていたためです。
最後に、息子がどんなプロセスを経て癇癪を起こさなくなったか…そんな話を置いておきます。
お子さんと保護者さん自身に合った方法を試しながら、長い目で、少しずつ取り組んでいただければ幸いです。
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この記事を書いているBranchは、不登校・発達障害のお子さま向けの「学校外で友だちができる」Branchコミュニティを運営していて、以下のような特徴があります。
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