こんにちは。不登校や発達障害のお子さんと保護者さんのための居場所、Branchコミュニティ、保護者ライターの烏龍茶です。
Branchユーザーさんからの「不登校」や「行き渋り」に関する質問を、本田秀夫先生(信州大学医学部 子どものこころの発達医学教室 教授)にお尋ねしました。
今回の記事では、その一部を紹介していくとともに、実際に不登校家庭では勉強にどのように取り組んでいるのかをご紹介していきたいと思います。
YouTube▷「学校行きたくない」の言葉は子どもにとっては問題の始まりではなく最終段階【信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授本田秀夫先生】
保護者からの質問「学習への拒否感が強いです」
“不登校中。学習への拒否が強いです。
本人がやる気になるのを見守っているだけで良いのでしょうか?”
本田秀夫先生の回答
まずは見守る ~勉強への負担感が不登校の一因の可能性も
不登校になっていて学習への拒否感が強い人の場合、基本的に、「勉強させる」という煩悩をいかに抹殺できるかが親御さんの最大の試練です。
それが出来ないと子どもさんの不登校が長引くと思って頂いた方が良いですね。
不登校でも勉強が好きであれば、家で自主的に勉強する人もいるんですよ。
だから、不登校かつ学習への拒否が強いっていうことは、勉強すること自体に対する負担感も不登校の要因の一つになっている可能性があるということですよね。
「やる気になるのを見守っているだけで良いのでしょうか?」っていう質問に対しては、基本的には見守って良いんですけど、見守っていたらやる気になるという保証は全くありません。
そこを分かっておいて見守る必要があるんです。これ難しいんですよね。
社会適応に必要な勉強とは? ~身の回りのことや役割に着目する
本当に正直に言うと、特に中学生以降の勉強って将来何の役にも立ちません。
僕は発達障害だけではなくて知的障害の方もたくさん診ていて、昔から知的障害・発達障害の領域の専門家たちが言っていることなんですが、大人になった時に一番、社会参加がある程度うまくいくのは軽度の知的障害の方なんですよね。
確かに、手帳を持っていたり障害者年金を取得したり、経済的には援助が必要なことが多いんだけど、本人が前向きにちゃんと社会に出て働いている。しかも自分で余暇も楽しめている。そういうライフスタイルが送れている方っていうのは、実は軽度の知的障害の方に結構多いんです。
それはなぜかって言うと、無駄な勉強をしないで将来実用に役立つような勉強を学校でしてきているからなんですね。
特別支援学校の高等部をちゃんと出た軽度の知的障害の方が一番、生活能力が高くて、自立心が高くて、自己肯定感が下がらずに社会参加できているんです。
一方で、知的障害のない方がなぜ難しいかっていうと、無駄な勉強をするのが自分の人生に大事だと思い込まされてるからであって、結局大学を卒業しても身の回りのこと全然できないで大人になっちゃっている発達障害の方が大勢おられるわけです。
そうならないためには、学校の無駄な勉強をするよりは、むしろ身の回りのことをちゃんと自分でやるとか、家族の中で多少の役割分担をするとか、そういったことをちゃんと学ぶ方がよっぽど大事なんですよね。
“何に”やる気になるのを見守るかっていうと、例えば自分の身の回りのことは自分でやるとか、家族と仲良く暮らしながら多少は家事の分担をするとか何か役割を担うとか、そういったことへのやる気が出るのは見守って頂いて良いと思うんですよね。
学校の勉強をやる気になることは見守っていても無理な人は多いかもしれませんし、それは見守らなくて全然構わないんじゃないかなと思いますね。
Branchでは、不登校・発達障害があるお子さま向けに、安心して過ごせる居場所として、「学校外で友だちができる」オンラインフリースクールを運営しています。
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Branch保護者の声
本田先生のインタビューからは、「勉強させなくては」という考えにとらわれず、勉強の本来の意味を考え直すことが第一歩であることが伺えました。
せっかく学校を休んでいるのに、家庭でも勉強をしなくてはならない環境であれば、エネルギーの回復が遅れるというのは頷ける話です。
ところが、頭でわかっていても、本田先生が「親御さんの最大の試練」というように、勉強する我が子をなかなか諦められないのも親心。
実際に、Branchコミュニティでも、勉強に対する悩みはたびたび話題にあがる関心の高いテーマといえます。
実際に見守れた…?勉強への向き合い方
Branchに参加されている保護者さんたちは、お子さんの勉強に、どのように向き合ってきたのでしょうか。
勉強を継続することが難しいワケ
不登校の初期段階では、親も手探りで、「何をしたらよいのかわからない」「せめて学習の遅れだけは避けたい」という気持ちになるのが普通ではないでしょうか。実際に、学校を休んだ日には、その日の時間割に沿って家庭学習に取り組んでいたという声を聞くことがあります。
ー学校に行かないにしても、みんなと同じ学習内容を、みんなと同じペースでこなせば安心できる。
ー家庭で少しでも勉強に取り組めば、休んだことに対する罪悪感が薄まる。
不登校児の保護者である私も、実際にそう考えていた時期がありました。
また、不登校のお子さんのなかには、家族以外の人と会うことや、母子分離不安、外出不安を覚える場合も多く、「家庭でなんとかするしかない」と親が追い詰められやすい状況にあるのも事実です。
しかしながら、「学校に行かない」という突然の非日常のなかで学習を継続することは、現実的にかなり厳しいのが実情です。
さまざまな通信教材を試したり、オンライン家庭教師を探したりと、お子さんに合った学習方法を探すことも大切ですが、学校に行かない選択をしたお子さんのなかには、教えられること自体に強い抵抗を示す場合もあります。勉強に無理して取り組んだ結果、保護者さんの方が疲れ切ってしまい、勉強をすること自体を諦めたというケースも多く耳にします。
お子さん自らが望まない学習の無理強いは、親子関係の悪化や、勉強そのものが嫌いになってしまうリスクがあることにも注意が必要といえるでしょう。
勉強が継続する子も
一方で、不登校でも家庭学習がうまくいっている事例もあります。
もともと勉強が好きで意欲がある、学習習慣が備わっている、といったお子さんでは、日々、自分で決めた課題に取り組んでいるケースも見受けられます。プリント1枚だけ、1日10分だけなどのスモールステップだったり、気分が乗らないときは休みにするなど、お子さんの状態や気持ちに合わせて無理のないペースで取り組んでいるようです。
また、学校には行かないけれど、習い事や学習塾には通えるというお子さんもいます。自治体の教育支援センターや適応指導教室を活用したり、フリースクールなどの第三の居場所につながったことで、お子さんに合った学習環境が整えられたこともポイントになっていそうです。
いずれにせよ、勉強に気が向く程度に心が元気で安定していることが必要のようです。
「勉強しない」をどう受け入れるか
「勉強はいつでも取り返しがつく」とはよく耳にするフレーズですが、すんなり受け入れるのは至難の業です。
「勉強しない」を受け入れるには、次の3つの考え方が助けになるようです。
こんな保護者さんの声がありました。
不登校になったばかりの頃は、「学校を休むなら家で勉強しよう」「将来やりたい事ができた時に、全然勉強していないと困るよ」などと言っては、なんとかして勉強させようとしていました。勉強をするかしないか、いつどんな風に始めるかというのは子どもの課題なのに、自分の課題にして勝手に頑張ってしまったんですね。
勉強の遅れを取り戻そうとか、何かやらせようとか思うときは、たいてい私自身に余裕がない時だとある時気づきました。自分の焦りと子どもの問題を分けて考えるようにしました。
いわゆるアドラー心理学の「課題の分離」の考え方ですね。似た言葉に「親と子で境界をひく」という言い方もあるようです。
子どもに任せる部分、親がサポートできる部分を切り分けて意識することで、気持ちに折り合いをつけやすくする効果がありそうです。
子どもに勉強してほしいと考える場合、「国語・算数(数学)・理科・社会・英語」の5教科がまず思い浮かぶのではないでしょうか。Branchの利用者さんのなかには、「学校の勉強(いわゆる教科学習)は一切していない」というご家庭もいらっしゃいますが、そんなご家庭では日常生活での学びを大切にしていることが多いようです。
例えば、不登校中にYoutubeやゲームで過ごすお子さんは多いのですが、子どもはどんな過ごし方をしていても必ず学んでいます。「動画ばかり見ている」「ゲームしかしない」と一見心配に感じる行動も、「動画は見ることができる」「ゲームを楽しめる」など、お子さんの「出来ていること」として捉えるとどうでしょう。
おすすめは、一緒にやってみること。遊びのなかで得た知識や経験が、結果として教科学習と同じ学びになっていることもあるのです。親も一緒に取り組むことで、お子さんに合った学び方について理解が深まることもあるでしょう。
学校の教室で、机に向かって教科書を読むことばかりが勉強ではありません。
お子さんの「知りたい」「やってみたい」という探求心に気づくことが、学校の勉強を手放す第一歩なのかもしれません。
「勉強をしていないと将来困る」が真実なのか、そうでないのかを知っておくことは、精神的に子どもを追い込んでしまったり、保護者さん自身が不安に推しつぶれてしまうことを回避するために、とても大切なことです。
Branchのコミュニティ内では、保護者さん同士のおしゃべり会や質問コーナーも充実していて、私も、一歩先を行く先輩保護者さんから「大丈夫だよ」の安心をたくさん受け取ってきました。
実際、学び直しの機会はいくらでもあります。
同じような悩みを持つ保護者さんが集まる親の会に参加してみたり、進路相談会などに足を運んで情報収集してみるのも一つですね。
「勉強しない」を見守った先で起きた変化
実際、好きなことをして過ごしていると、だんだんとエネルギーがたまり心の回復が見られます。
好きなことを思う存分にやった時間と経験が、本人の意識に変化をもたらすことがあるようです。
実際にBranchを利用しているお子さんのなかでも、
- 進級や進学のタイミングで「このまま勉強していないとどうなるのだろう」と本人が心配になって計画的に学習を始めた
- フリースクールなどでレポート作成をする高校生の姿に影響を受けて勉強を始めた
- 学校の友達がどんな勉強をしているのか気になって登校を始めた
など、エピソードもさまざまです。
ゲームなど遊びでの交流が活発なBranchのコミュニティ内でも、自発的に子どもたちが声をあげて、勉強会を開催する姿を見ることがありますよ。
これだけはしておきたいこと
さて、勉強をしない我が子を見守るなかでも、実はこれはやっておくといいよというものがあります。
それは、子どもが「好き」から学んだことを、言葉にしておくことです。
将来的に高校受験をするときなど、不登校期間中に学んだことを聞かれるケースがあるようです。そんなときにも、きっと一助になってくれることでしょう。
また、学校に行かないこと、授業を受けていないことに後ろめたさや罪悪感を抱いている場合には、学びが目に見える形になっていることで安心や自己肯定感につながりやすいのではないでしょうか。
自分の好きなこと・やりたいことを見つけるスキルは、本田先生のおっしゃる余暇を楽しむスキルそのものです。是非、子どものうちから「好き」を大切にしていけたらいいですね。
最後に
いかがでしたか。
心の回復が終わり、安心できる環境があると、自分から動き始める可能性は確かにあるようです。
タイミングは、お子さんひとりひとり違います。焦らずじっくり見守っていきたいですね。
発達障害や不登校の子の「友だちができる。安心できる居場所」とは?
Branchでも1つの解決策として、不登校・発達障害があるお子さま向けの「学校外で友だちができる」Branchコミュニティを運営していて、以下のような特徴があります。
- 同じように「学校行きたくない」という気持ちを抱え、家族以外の人との関わりが減ってしまった不登校のお子さま達が自分の「好きなこと」をきっかけに安心できる居場所や、友達ができるようなサービス。
- NHKや日テレなど多くのメディアにも紹介され、本田秀夫先生との対談や、厚生労働省のイベントの登壇実績もあり、サービス継続率は約95%以上。
- 小学校低学年のお子さまはもちろん、どんな子でも楽しく参加できるようにスタッフがお子さま一人ひとりに寄り添ったサポートを徹底。
Branchコミュニティは1ヶ月無料体験ができるので、ご利用を迷われている方は一度お気軽に無料面談予約をお申し込みください。