不登校の児童数は年々増えていっており、不登校の原因や経過に関するさまざまな調査研究も行われています。そうした背景もあり、インターネットで不登校について検索すると、「不登校の原因のタイプは○○種類」「○○タイプにはこういう対処法を」といった記事を目にすることも少なくありません。
研究によって原因や対処法の分析が進むことで、よりシステマチックな対応が可能になることも期待されますが、いち保護者や当事者の立場としては、「一対一対応では整理しにくいこともあるのでは」「もっと一人ひとりの詳細な事例を知りたい」と思うこともあるでしょう。

そこで今回は、発達障害・不登校の親子向けにオンラインコミュニティやメンターサービスを運営するBranchで行った保護者さんへのインタビュー内容をもとに、不登校のさまざまな原因や対応方法を考えたいと思います。既存の統計や研究を参考にしつつも、この記事では、「一人ひとり」異なる、不登校の原因やきっかけをなるべく詳細にご紹介していきます。

 

不登校児童の人数と割合

まずおさらいとして、不登校児童の人数についてです。

以前Branchで公開した以下の記事から、小・中学校の不登校児童生徒数の割合に関する記述を改めてご紹介します。

不登校と発達障害の重複割合は?医療機関・教育機関の調査・統計から見える傾向

令和元年度、つまり、2019年4月〜2020年3月の調査結果となります。
まず、小・中学校における不登校児童生徒数は181,272 人(前年度164,528 人)で、児童生徒全体に対する不登校の割合は1.9%(前年度1.7%)という結果が出ています。

 

不登校児童生徒のうち、90 日以上欠席している児童生徒は、小学校22,632 人(前年度20,047 人)、中学校78,225 人(前年度75,588 人)、全体では100,857(前年度95,635 人)人でした。

 

不登校児童生徒に占める割合は、小学校42.4%(前年度44.7%)、中学校61.2%(前年度63.2%)、全体では55.6% (前年度58.1%)で、不登校の子どものうち約半数は、90日の以上の欠席となっていることがわかります。

 

インタビューから見える、多様な不登校の原因・きっかけ

上記のような統計は、あくまで不登校児童の人数・割合の全体傾向です。一人ひとりの事例をより詳しく見ていくと、不登校の原因やきっかけは多種多様であることがわかります。

以下では、不登校児童の保護者インタビューの内容を、一人ずつご紹介していきます。


友達が他の子を叩いているのを見て怖くなった。勉強が難しくて自信をなくしてしまった

現在、息子は小学4年生です。

小学2年生の1学期に、「学校行きたくない」となり、その後、最初の1ヶ月間は学校を休みました。

原因はなかなか話してくれなかったのですが、じっくり聞いてみると、友達が他の子を叩いているのを見て怖くなったり、勉強が難しくて自信をなくしてしまったりしたようです。

大きな困りごとがあるわけではないのですが、癇癪があったり、不安を感じたりしてしまうことが多く、学校に行きたくない気持ちになって母親から離れられない、などの課題がありました。

習い事中に吐いたことがきっかけで、「学校で吐いてしまったらどうしよう」という不安が強くなった
幼稚園児の時から、私(母)が無理やりやらせて、それをこなしてきた感じでした。私と離れることも、バスに乗ることも、運動会、お遊戯会、全て嫌だと言ってるのに、にんじんをぶら下げてやらせてきてしまいました。

小学校1年生の12月の時に、習い事中に吐いてしまったことがあり、それがきっかけで「学校で吐いてしまったらどうしよう」と不安になり、学校に行けなくなりました。
その後、コロナもあって学校に行かない期間が続き、知らない間に2年生になっていました。

学校には当然なじめず。担任の先生に「給食が気持ち悪いので保健室で休みたい」と言っても「大丈夫だから」と信じてもらえなかったようです。

それまで、連行状態で学校に連れて行っていたのですが、ネット検索で「不登校」とか「学校行かないといけないのか」とか調べている中で見つけたのがBranchさんでした。

そんな過去の経緯から、本人の「嫌だ」「やりたくない」の気持ちの理解だったり、「好き」「やりたい」の発見をして、親がまず理解してあげないと、と思ったんです。

今は、全く学校に行っていません。

 

聴覚・嗅覚過敏があり、子ども達のザワザワした雰囲気が苦手。校舎・教室に入ることへの拒否反応が出た

聴覚・嗅覚過敏なため、子ども達のザワザワした雰囲気が苦手となり、校舎・教室に入ることへの拒否反応が出ました。

給食の匂いも嫌で、偏食で食べれる物が限られている中で、先生に「1つでもいいから食べて」と言われたことが辛かったらしく、ずーっと覚えているようです。
さらに、コロナ対策でマスクしなきゃいけないことも辛いようです。本人は「学校は菌だらけだから入れない」と言っています。

今振り返ると、息子にとって人生初めての学校は、苦痛と不安でしかない場所だったように思えます。

行き渋っている時もけっこう大変でした。自分で頭叩いたりとか。
今は、「学校行かなくていい」となって穏やかな生活になりました。

 

同年代の子どもと関わるのが嫌だった

学校には小学1年生の3学期から行っていません。
本人曰く、同年代の子どもと関わるのが嫌だったみたいですね。

振り返ってみると、感覚過敏があったり、文字を書くのが苦手だったり、見通しが立たないのが嫌だったり、他にもたくさんストレスがあったんだと思います。

でも、行きしぶりが始まった当時は、私も理由がよく分からなくて。

学校に行かなくなってからすぐ、「死にたい」と本人がすごく頻繁に言うようになりました。

他にも、給食をランドセルにそのままぶち込んで持って帰ってきたり、「死んだほうがまし」と私に手紙で書いて伝えてきたり……。

「私のこと、分からなくなってしまうんじゃないか」というくらい急激な変化でした。

それまではサッカーにも行って、他にも色々活動して、とバタバタだったのに、いきなり全部ダメになりました。

 

コロナで「普通」が変わってしまった

息子は学校に行くことが大好きだと思っていたのですが、学校へ行くと「教室がザワザワして気持ち悪い。頭が痛い」と言い、給食は食べられず、机に伏せている状態が続き、早退や欠席が多くなりました。

私は最初、まさか学校が合わないとは思いませんでした。
でも思い当たることはありました。まず、コロナで普通が変わってしまったこと。今までのように友達とワイワイ近寄って遊べなかったこと、休校中に家の前で利き手を骨折して、あまりの痛さと辛さを知って、ギプスをしながらの登校が大変だったことなどがあります。

また、うちの子にはアトピーがあり、汗をかくとかゆくてかゆくて仕方ない体質です。今思うと、学校に行くだけで他の子よりもしんどい思いをしていたんだよなあ、と感じ、それも不登校の原因のひとつだと思っています。

ギプスの中も蒸れてかゆく、食欲もなく、頭痛がするか、イライラするか、どちらか。この頃は人が変わったように物に当たったり荒れたりしていました。


保護者から見た、不登校の原因・きっかけまとめ

その他にも、多くの保護者さんにインタビューでお話をお聞きしました。不登校に関するエピソードを以下に抜粋します。


Aさん
・手先が不器用で、できないことも多く、初めての場所に緊張する。
・先生の声が大きく、強引なところが元々苦手でたまに休む形に。
・その後も先生から強引な感じで「来れるよね!」みたいな圧があって、ますます行けなくなった。
・「先生恐怖症」と本人は言っている。

Bさん
・小学校1年生の1学期に些細なことから先生に叱責され、その場で倒れて高熱を出し、それ以来6年間学校に行っていない。
・不登校になってから緘黙になり、親以外とは誰とも話していない。

Cさん
・集団が苦手。喧嘩が起こるのが嫌。なので、学校に行きにくい。
・住んでいる地域的に喧嘩などが良く起こる。
・もう2年ほど学校に行っていない。
・休んでいる期間が長いので、「みんなに会わせる顔が無い」と言っている。

Dさん
・発達障害で集団行動が非常に苦手。「クラス単位で動く授業は拷問のように感じているだろう」と、お医者さん談。
・本人は勉強に対する意欲もあり、知的にも非常に発達している。
・将来的に「好きな授業だけ行けたらな」と話している。

Eさん
・学校は行ったり行かなかったり。
・小学校低学年時に海外生活。その頃にローカルの学校に行っており、言語も流暢ではなかったため、変な目で見られたりして、それが「学校=苦手」になったのではないかと保護者の方は思っている。
・場面緘黙。

Fさん
・小学校2年生の時に担任と合わず、学校へは行っていたが廊下や保健室にいた。
・3年生で合う先生に出会えて通いだしたが、また最近不登校に。
・不規則な音や雑踏が苦手で、匂いも過敏。それが理由になっているのではないか?

Gさん
・小学校1年生の最初の頃から「学校に行きたくない」と行ったり行かなかったりの状況になった。
・本人は「ドキドキするから行きたくない」と言っている。
・検査でLD(限局性学習症)の可能性があると言われている。文字を読んだり書いたりに苦手意識があり、それで周りと比べてしまい、学校が苦手になったのではないかと思われる。
・1対1は大丈夫なので、担任の先生や校長先生と1対1で話したりはしている。

Hさん
・ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如・多動症)と診断されている。
・幼稚園の頃は他者との関わりでの問題は全くなく、親も共働きで全く気づかなかったが、小学校2年生の2学期に突然「学校に行きたくない」と本人が言い出した。
・知的な遅れはなく、おそらく発達特性によるものが原因だと思われ、お医者さんにも相談しながらどうするか考え中。
・環境さえあえば、問題なく学校にも通いそう。

Iさん
・小学3年生で不登校。
・直接的な原因は分からないが「疲れた」と言っている。
・学年が上がったとか、板書が間に合わないとか、音がうるさいとか、環境面の変化などがおそらく原因だろうと思われる。

Jさん
・発達障害で、支援級に行っていた。
・過去2回、普通級と通級から元気な子が来た際に不登校になった。
・支援級なのにできないことをどんどんやらされて自己肯定感が下がっている。「もう鉛筆持つもの嫌だ」と本人は言っている。
・不登校になってから、心は徐々に落ち着いてきた。

Kさん
・帰国子女で帰国後の1年は理解のある先生で問題なく登校。
・その次の年の先生から人権侵害のような言動を何度もされて、学校に行けなくなった。
・英語で教育を受けており、そのことについて度々みんなの前でいじられた。

Lさん
・特別支援学級に行っている小学1年生。
・突然不眠になり、現在は学校に行っていない。
・書字の問題や、音が苦手など、様々なことに過敏でそれが原因で不眠になったと思われる。

Mさん
・担任の先生が怖くて、繊細なことがあって怖くて行けなくなった
・フリースクールなどの見学に行ったことが一回行って、入園しようとなると最初の登校日になるといけなくなった。
・不登校専門の自宅に来てくれるサービスを使ったことがある。3,4回来てもらったが馴染めなかった。来る方も元不登校の方ですごく気を遣う、うちの子も気を遣う、お互いに気を遣いすぎてたのかもしれない。

Nさん
・住んでいる地域の公立の学校はまだ発達障害への理解が遅れている。
・本人が選択できる幅がある私立中学受験を目指してがんばっていたが、起立性調節障害を発症、急に全てのやる気がストップ。
・頑張って行っていた塾もやめることになった。

Oさん
・ずっと座っていたり、ずっと話を聞いたりが苦手
・転居もあり、転園したりもあった
・高機能自閉症と診断
・通級に最初入った。母子分離ができなかった。支援級の提案もあったが本人の認識として「学校」と一括りになってしまい、結局駄目だった。

Pさん
・4月から不登校
・原因は男の先生が担任で、怖いとのこと。
・その先生は人気先生で、お母さまは「やったー」と思った。親の認識とズレている部分があり、自信がなくなった。

 

不登校に関する考え方

多くの子は一度不登校になると、再登校までかなりの時間を必要とします。まずは子どもの心身の健康を第一に、医師や支援機関、学校、そして何より本人と相談しながら、登校については無理ないペースで考えてください。

現在では、文部科学省も、不登校児童への支援について、”「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく,児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて,社会的に自立することを目指す必要がある”という考え方を明示しています。

学校に行かないことは「良くないこと」という価値観を子どもに押しつけるのではなく、その子にとって、登校することがどのような意味を持つのか、登校するとしても、どのくらいの頻度・方法・時期が望ましいのかを、ケースバイケースで考えていくことが大切です。

原因、そしてその対処方法は一つではありません。
お子さん一人ひとりの観察を通じて、そのお子さんにとって良い対応方法を考えて行きましょう。

不登校と発達障害の関係や、支援の考え方・方法などについては以下の記事もご参考にしてください。

発達障害・不登校の子どものために、保護者ができること。知っておきたい考え方と相談先

 

 

 

ライター:中里祐次


Branch代表。早稲田大学卒業後、㈱サイバーエージェント入社。子会社の役員など約7年勤めた後にサイバーエージェントから投資を受ける形で独立。自分の子どもがレゴが好きで、東大レゴ部の方に会いに行った時に目をキラキラさせていたのを見てこのサービスを思いつきました。好きなことは、漫画やアニメを見ること、音楽を聞くこと、サウナ、トレイルランニング、かなり多趣味です。Branchの子どもたちに鍛えられて子どもが好きな遊びはたいていできるようになりました。