こんにちは。不登校や発達障害のお子さんと保護者さんのための居場所、Branchコミュニティを利用している、保護者ライターのタカハシです。
2024年の幕開けは、大きな災害や事故が続き、つらく悲しいものとなってしまいました。
不安を感じやすかったり、ふだんと違うことが苦手であったりするお子さんのいるご家庭にとって、直接の被害にあわれた方はもちろん、そうでなくても対応の難しさを感じる場面が多かったのではないでしょうか。
元日に能登半島を襲った地震の被害はとても大きく、東京に住む私たち家族も心を痛めています。義援金など被災地のためにできることを家族で話し合いながら、私たち自身の災害への備えを見直す機会にもなりました。
この記事では、今回のような大きな災害への備えとして、不登校や発達障害のお子さんのいる家庭で必要になることを、保護者の目線で考えていきます。不登校の子どもはすでに心理的ケアが必要な状態にあることが多いですし、発達障害のある子は災害発生時や避難したあとにも特性からくる困難が予想される場合もあります。一般的な防災対策だけでは心もとない部分があると思います。
お子さんの特性に合わせた防災対策を家庭で考える際に、この記事が少しでもお役に立てることを願っています。
災害ニュースによる子どもたちの不安を和らげるために
地震後、子どもたちの感じた不安
Branchオンラインコミュニティの子どもたちのチャンネルでは、今回の地震直後から不安そうな様子の書き込みが見られました。
緊急地震速報のけたたましい警報音や、テレビから流れる緊迫した声、中継のカメラが映し出す被災地の様子などが、子どもたちに大きな不安を抱かせたのだろうと想像できます。
保護者チャンネルでは「子どもが不安がったのでテレビを消した」「息子が不安定になってきた」といった話をされる方もいらっしゃいました。繊細さのあるわが家の小学3年生の娘も、地震のニュースが流れるたびに硬い表情を見せています。
災害時の子どものケア、覚えておきたい4つのポイント
災害のニュースがもたらす子どもの心への影響とそのケアについては、インターネットをはじめたくさんの情報が出ているので、すでにご覧になった方も多いと思います。
ここでは、4つのポイントにしぼってわかりやすく伝えている、「日本ユニセフ協会」のサイトをご紹介します。私にとっても今のわが子の心に向き合うにあたり、参考にしたいと思う内容でした。
- 「安心感」を与える
- 「日常」を取り戻すことを助ける
- 被災地の映像を繰り返し見せない
- 子どもは自ら回復する力があることを理解し、見守る
テレビの緊迫したアナウンスーその意味を「事前」に説明しておく
地震発生直後のテレビで、津波から逃げるように伝えるアナウンサーの声色に、驚いた子どもも多かったのではないでしょうか。
「今すぐ逃げること!」と繰り返し叫ぶ切迫した様子や、「津波!避難!」といった文字とともに赤や黄色に点滅する画面のマークを、私の娘もとても恐ろしく感じたようです。しかし、まだ地震の規模や震源地がどこかさえわからない状況下では、不安を取り除いてやりたくとも、なかなかテレビを消す気にもなれませんでした。
そのときになって、津波の被害が想定される場合にはテレビのアナウンサーが緊迫した声で呼びかけることを、あらかじめ説明しておけば良かったと後悔しました。
東日本大震災では、落ち着いた声での呼びかけが結果的に被災者の緊張感を削ぎ、迅速な避難行動につながらなかった可能性があるという教訓をもとに、その後大きく緊急時のアナウンスの仕方が変わったということは、私自身どこかで読んで知っていたことでした。しかし、それを娘にまで伝えておくという考えには至っていなかったのです。
娘の場合は、起きている出来事の原因や理由に納得すれば、「わけのわからなさからくる恐怖心」が取り除かれ、落ち着くことができるタイプです。そうした性格をふまえれば、この事前情報を伝えておくことで、必要以上の恐怖心に襲われることは避けられたように思います。
防災教育の一環として、地震や津波の被害にあったときの行動を話しておくのと同じように、不安を抱えがちな子どもへの配慮としての事前準備も、あわせて考えていかなければと思った出来事でした。
- <あの日から 東日本大震災10年>「逃げて!」「命を守る行動を」震災きっかけ NHKの避難呼び掛けに変化
(東京新聞web 2021年3月6日) - ひるむな、立ちつくすな、ためらうな。「ことばで命を守る」アナウンサーたちの10年
(NHK 取材ノート、ひろげます 2021年7月5日)
子ども一人ひとりに合わせた防災教育を
地震だけではなく、台風による風水害や火山の噴火、土砂災害など、毎年のようにさまざまな災害に見舞われている日本では、幼稚園や保育園、学校での防災教育にも力が入れられています。
しかし、不登校のお子さんは、学校でそうした教育を受ける機会が得られにくくなるため、家庭での防災教育がより重要になります。また、発達の凸凹が大きいお子さんには、一般的な防災教育に加えて、お子さんが学びやすい伝え方をしたり、特性からくる困りごとに合わせた備えをしたりする必要があることもあります。
防災教育のヒントとなるサイト
一般的な防災教育についてわかりやすくまとめられたものとしては、国際NGOセーブザチルドレンの公式サイトに「子どもにやさしい防災 もしものときのために、子どもと一緒に備える防災」というページがあります。
さまざまなトピックについて動画や読みもの(ルビが振られたものもあります)を中心にまとめられていますので、家族で見たりそれについて話し合ったりと、防災意識を高めるのに役立ちそうです。
《掲載されているトピックの例》
・子どもと一緒に非常用持ち出し袋の準備
・避難生活で役立つ工作
・避難先でもできる遊びのアイデア
・みんなで考えよう!自然災害と防災―みんなに知ってほしい!自然災害のこと
・災害がおきたときに取りのこされてしまいがちな人ってどんな人だろう?いっしょに考えよう!災害時の多様性について
・楽しみながら学ぶ災害時のアクション
発達障害のあるお子さんへの防災教育
NHK「災害時 障害者のためのサイト」では、障害の種別ごとに「避難する時の持ちもの」「普段からの備え」「災害が起きたら」といった内容がまとめられています。障害がある方ならではの必要事項も加えた情報が、端的な文章にルビも振って書かれており、多くの方にわかりやすいサイトになっています。
また、特別支援教育を専門とする鳥居深雪氏(現・関西国際大学)の神戸大学時代の研究室のサイトには、研究成果として「発達障害のある子どもの防災教育ガイド」が掲載されています。
こちらでは、災害時に命を守るためにとるべき行動が、視覚的にわかりやすくまとめられています。
福祉避難所の場所を事前に確認
各自治体は、近所の小中学校などの指定避難所とは別に、高齢者、障害のある人、乳幼児や妊産婦など、特別なケアが必要な人が利用できる「福祉避難所」を設置しています。
設置される場所や数、設置までの日数や利用できる人など、自治体によって違いがかなりあるようなので、あらかじめ確かめておくようにしましょう。
非常時持ち出し袋に何を入れるか
自宅に備蓄品を用意したり、自宅や学校からの避難方法や家族との連絡の取り方を確認しておいたりなど、災害に備えて「やっておくべきこと」「知っておくべきこと」はたくさんあります。
まずは自宅避難を原則に、自宅で数日は過ごせる工夫をそれぞれに進めていらっしゃる方が多いのではないかとは思いますが、やむを得ず自宅を出て避難しなければならないケースも想定しておかなければなりません。
この項では、自宅外へ避難するときの「非常時持ち出し袋」の中身として、不登校や発達障害のあるお子さんに何が必要かを考えていきます。
非常時持ち出し袋のチェックリスト
非常時持ち出し袋は防災士などの有資格者が監修したセット商品や、さまざまな属性(性別や年齢など)に合わせた必要品をまとめたリストなどが多く出回っており、すでに自宅に用意している方もおられると思います。
ここでは、「子どもと一緒に準備する」という視点から作られたチェックリストをひとつだけご紹介したいと思います。
先にもあげた国際NGOセーブザチルドレン「子どもにやさしい防災――もしものときのために、子どもと一緒に備える防災」というページ内の、「子どもと一緒に非常用持ち出し袋の準備」で、一般的に必要とされる品物のチェックリストを見ることができます。
感覚過敏への対応や常備薬など、発達障害のある子の非常時持ち出し袋
不登校や発達障害のお子さんについては、情緒的な不安定さや特性による困りごとへの備えが必要となり、セーブザチルドレンなどがあげている品物だけでは十分でない場合もあります。
大きな音やざわざわした場所が苦手であれば耳栓やイヤーマフ、アレルギーがあったり決まったものしか口にしなかったりするお子さんには慣れたおやつや飲みものを、薬を毎日飲んでいる場合にはいつもの薬を数日分(保険証・医療証やお薬手帳も一緒に持ち出せるように)など、必要なものは人それぞれです。
お子さんの特徴にあわせた準備をすすめるにあたり、参考になりそうなサイトをいくつかあげておきますので、これらのヒントをもとに、ご家族ごとに最適なカスタマイズをしていただけたらと思います。
- 感覚過敏がある人の防災対策(KABIN LABO 感覚過敏研究所)
- 障がい者の防災対策~備え・もちもの・緊急時の対応~
(みんなの障がい 全国の障害者・福祉福祉施設が見つかるポータルサイト) - 防災・支援ハンドブック(日本自閉症協会)
※「本人・家族用」のPDF p.6に「命を守るために 準備編①」として、防災リュックの中身について書かれています。 - 災害時サポートブック作成支援のための手引き(PDF)(岡山県障害福祉課)
※p.17にさまざまな障害ごとの持ち出し品チェックリスト
避難所生活を少しでもスムーズにするために
発達障害のあるお子さんのなかには、環境の変化に弱く、他の人には奇異に映る行動をとってしまったり、一斉指示が通りにくく情報の伝達が難しかったりと、避難所での集団生活になかなかなじめないケースもあるかと思います。
避難が必要になったとき、発達障害を知らないスタッフやほかの避難者に、適切なサポートの仕方を口頭で説明するのはご家族にとっても簡単なことではありません。
そこでおすすめしたいのが、お子さんの特性や必要な支援を避難所の人たちに知ってもらうための資料を、非常時持ち出し袋に入れておくことです。
発達障害情報・支援センターが作成している「被災地で、発達障害児・者に対応されるみなさんへ」という掲示用の資料には、発達障害についてのごく基本的な知識や対応にあたっての留意点、「ちょっとしたコツ」などがわかりやすくまとめられています。避難所のスタッフに見せたり、壁に貼っておいたりすると、より適切なサポートを得ることができそうです。
また、視覚的な情報をもとにコミュニケーションを円滑にするために作られた「コミュニケーションボード」の活用も視野に入れておくと良いかもしれません。
自閉症や知的障害などの影響で会話がスムーズでない人だけではなく、聴覚障害のある人や日本語を母語としない人にも使えるコミュニケーションボードが多くの自治体で作成・配布されています。ぜひ、お住まいの自治体サイトなどで確認してみてください。
ここでは愛知県大府市作成の、災害に特化したコミュニケーションボードをご紹介しておきます。
おわりに
2024年1月1日に起きた能登半島地震をきっかけに、あらためて家庭での防災を考え直そうと、事前準備の観点からお伝えしてきました。
不登校などすでに心理的ケアが必要な状態にあったり、発達特性からくる困難を抱えていたりするお子さんには、その子にあわせた特別な事前準備が必要になることも少なくありません。子どもたちの心との向き合い方、非常時持ち出し袋の中身の検討など、この記事を通じて考えたことが少しでも役に立てばと思います。
最後に、私からひとつ提案をさせてください。
対応の難しいお子さんたちについての情報がまとまったものとして紹介した、発達障害情報・支援センターの「被災地で、発達障害児・者に対応されるみなさんへ」、そして、視覚的な情報でやりとりを円滑にするための「コミュニケーションボード」。これらを印刷した紙を、この記事を読んだみなさんの非常時持ち出し袋に加えてみてはいかがでしょうか。障害のある当事者であっても、なくても、ひとりでも多くの方がこれを避難所等に持参し、役に立てていただきたいのです。
たとえ気がついていなくとも、あなたのそばにはきっと何らかの障害のある人が住んでいます。日本語が得意でない人が住んでいる可能性もあります。
あなた自身に、あるいはあなたの家族にとって必要でないとしても、同じ避難所に集まったなかにはこれらの紙が役に立つ人がいるはずなのです。
私たちの社会は、多様な人々によって構成されています。障害のある人、外国ルーツなどで日本語を母語としない人、病気を抱えている人や乳幼児、妊産婦、高齢者など「災害弱者」となりうる人々とともに、私たちは暮らしているのです。
まだ見ぬ隣人のためにささやかな準備をしておく、そんな小さな支え合いの心が、この社会をより住みよいものへと変えられるという希望をこめて、この記事を締めたいと思います。
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この記事を書いているBranchは、不登校・発達障害のお子さま向けの「学校外で友だちができる」Branchコミュニティを運営していて、以下のような特徴があります。
- 「学校行きたくない」という気持ちを抱え、家族以外の人との関わりが減ってしまった不登校のお子さま達が自分の「好きなこと」をきっかけに安心できる居場所や、友達ができるようなサービス。
- NHKや日テレなど多くのメディアにも紹介され、本田秀夫先生との対談や、厚生労働省のイベントの登壇実績もあり、サービス継続率は約95%以上。
- 小学校低学年のお子さまはもちろん、どんな子でも楽しく参加できるようにスタッフがお子さま一人ひとりに寄り添ったサポートを徹底。
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