こんにちは。不登校や発達障害のお子さんと保護者さんのための居場所、Branchコミュニティを利用している、保護者ライターのタカハシです。
私の子どもは現在、不登校3年目。一般的にもよくみられる不登校直後の落ち込みや外出困難を経験し、徐々に元気を取り戻してきた段階にあります。そんな娘がこのたび、伸ばした髪を医療用ウィッグを作る団体に寄付する「ヘアドネーション」を経験しました。今回はその顛末と、私たち家族なりの社会参加への模索をお伝えしたいと思います。
不登校の子どもと家族が味わう不安、孤立感
子どもが不登校になったとき、ましてや家に閉じこもってしまったとき、多くの保護者さんは、わが子が社会から切り離されてしまったような孤独と不安を感じるのではないでしょうか。Branchを利用する保護者へのアンケートでも、不登校で「不安に思ったことはなんですか?」という質問に対して、「外の世界との接点がなくなること」「孤立」といった答えがあがっていました。
また、逆に、専門医に「学校行かなくても社会性は(身に)つきます」と言われて気持ちが楽になったというエピソードもありました。
学校へ行かなくなると、習いごとや塾へも足が向かなくなり、地域や友人とのかかわりが途絶えてしまったという話はよく聞かれるところです。当たり前だった人との交わりがなくなることは、家族に深い孤独感をもたらします。そして、「再びそこへ戻れるのだろうか」「このままひきこもりになってしまったらどうしよう」といった、将来への不安もかき立てられます。
私たち家族も例に漏れず、同じような思いを味わいました。
学校へ行かないという選択をしたあと、新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)拡大の影響で、すぐにフリースクールなどへの通所に移れなかったことも手伝い、精神的に落ち込んだ娘は、次第に外出を拒否し、家族以外との交流を避けるようになってしまいました。習いごともすべてやめて、家の中、家族だけで完結する暮らしになったことに、私たち夫婦は焦りを覚えました。
もちろん、子どもにとって家庭が安心できる場であることが、何より大切なことはわかっています。ですから、娘の傷ついた心が癒えて再び外を向くまでじっくり寄り添うことが第一で、決して「外へ出よう」「人と交流しよう」などと働きかけるべきではないと考えていました。
それでも、やはり何らかの形で社会とつながっていてほしいと、親としては思わずにはいられなかったのです。
ヘアドネーションのきっかけ
娘の場合は母子分離不安が強く出るようになったため、数ヵ月にわたって私とべったりでした。ごみ捨てすら行かせてもらえず、1日に何度もハグをねだられるような状態でしたので、美容室のような時間のかかる外出はなかなかできにくい日々が続きました。
結局、私が美容室に行けたのは、娘の不登校がはじまって1年近く経ったころだったと思います。
折からCOVID-19のために足が遠のいていたところに、娘の不登校がはじまったような形でしたので、もともと長めだった私の髪は、腰に届きそうなほどに伸びきっていました。
気分を変えたくて、さっぱりと短くしてしまいたいと言った私に、美容師さんの口から出たのが、
ヘアドネーションができそうですね
という言葉だったのです。
私の髪は、次にまたいつ美容室に来られるのかもわからなかったこともあって、そのまま切ることにしてしまったのですが、ふと、同じように長くなってきている娘の髪を寄付できるのではないか、という考えが頭に浮かびました。そこで、あとで娘に提案してみるのも良いかもしれないと、ヘアドネーションについて美容師さんにあれこれ質問して教えてもらいました。
帰宅して話すと、娘は、自分の髪が必要としている誰かの役に立つかもしれないという話に興味をひかれたようでした。
一緒にインターネットでさまざまな団体のサイトを見てみたあと、子ども用の医療用ウィッグを作っている団体への寄付を目標に、髪を伸ばすことに決めました。
※医療用ウィッグのヘアドネーションには31cm以上の髪が必要な理由、子どもがヘアドネーションをする場合の注意点など、さまざまな団体が丁寧な情報発信をされています。この記事ではわが家の体験談をお届けしますが、ヘアドネーションにご関心を持たれた方は、募集団体のサイトから詳しい情報をお調べください。
ヘアカット当日の様子
さて、そんなわけで、目標だった31cmを超えるのを見計らって(ヘアドネーションできる最低ラインが31cmです)、先日美容室で髪を切り、医療用ウィッグを作る団体へと郵送しました。
何しろ不安の強い子なので、娘は髪を切る数日前から、印象が変わってしまうことへの抵抗感を繰り返し口にしていました。当日は約束どおりに行けるだろうかと心配もしたのですが、久しぶりとはいえ前にもお世話になっていた美容師さんということで、それほど緊張せずに終えられて安堵しています。
写真のように肩下くらいの長さカットとなったのは、大きな変化を嫌っていることを察した美容師さんがメジャーで31cmを何度も測りながら調整してくださってのことです。本来であれば少しでも長い状態で寄付できた方が良いとはいえ、これが今の娘が変化に対応できるギリギリのラインだったのだと思います。娘の不安感や葛藤に辛抱づよく付き合ってくださった美容師さんには、感謝の思いでいっぱいです。
不安のため前のテーブルを握りしめています。
娘の感想とふりかえり
こうして、無事にヘアドネーションを終えることができたので、娘に感想を聞いてみました。
髪を切り終わってどんな気持ち?切る前は不安だったよね?
さっぱりしてすごく楽。切って良かったよ。
伸ばしてる間はどうだった?
もつれるから大変だった。シャンプーも大変。
娘の髪は細くとてももつれやすいので、長く伸ばしていると実際とても厄介でした。特に暑がりの娘にとって、夏場にドライヤーの熱風に長時間あたるのは苦痛で嫌がっていましたし、私としても絡まった髪をとかしたり結んだりする負担は小さいものではありませんでした。
「もう切ってしまったら?」と、私の方が音を上げかけたことが何度もあったのですが、娘の意思が固かったおかげで、何とか完走することができたのでした。
…と、思っていたのですが、詳しく話を聞いてみると、どうやらそういうことではなかったようです。
髪を伸ばすのは大変だったけど、誰かの役に立てるならがんばろうと思った?
いや、それはあまり思わなかったかな。全然思わなかったわけじゃないけど、あんまり考えてなかったよ。それよりも、私は自分に自信がないから、「本当に役に立つのか」「私の髪でいいのか」という不安の方が大きかった。
じゃあ、どうして伸ばし続けたの?
ずっと髪が長い状態だったから、急に短くなるのは怖い。切りたくなかった。髪が長いのは邪魔だけど、だから切りたいとは思わなかった。
親の予想や思惑に見事な肩透かしをくらわせた娘のリアルなふりかえりを、そのままご紹介しました。
娘の言葉に思わずずっこけそうになりましたが、よくよく考えてみればそんなものかもしれません。
私自身、幼いころにはガールスカウトの活動などを通じてボランティア活動をする機会が多くありましたが、今思い返すと、ごみ拾いのときの友だちとのおしゃべりの楽しさだとか、思いがけず有名人を見ることができたときの高揚感だとか、「人のために役に立つ」という大義よりも先行する、ごく子どもらしい感情がありました。
娘については、それが「不安」であり「心配」だったのだと思います。
もちろん、もっと折にふれて何度もヘアドネーション先となるNPO団体のサイトを一緒に見たり、実際にヘアドネーションした人のブログや動画などを探したりして、本来の目的を確認する時間をもっとつくれば、また違った感想が出てきたのかもしれません。
でも、私としては、娘がいずれ大きくなって今回行ったことを思い返したときに、自分であらたな意味を見出してくれたら、それで良いと思っています。短期的な成果としては期待していたものではなかったとしても、子ども時代の経験のひとつとして彼女のなかに蓄積されていれば、それで十分です。
おわりに
子どもが不登校であったり障害があったりすると、子どもも保護者も、自分たちは「人から支援を受ける立場である」と考えることが多いかもしれません。でも、今回のヘアドネーションに限らず、誰かを支援する側に回る機会や方法は、実はたくさんあるのだと思います。
「社会とつながる」「家の外の世界とつながる」ということを私たち家族が柔軟に捉えるきっかけを与えてくれた美容師さんや、こうした機会をつくってくださっているNPO法人には本当に感謝しています。
実は、髪を伸ばしている間に、わが家は別の形の社会貢献にも参加しました。それが、不用品の寄付です。海外の貧困地域に日本で寄付された物品を届ける活動をするNPO法人に、おもちゃや古着などを送付しました。
今回、寄付先として選んだこちらのNPOは、寄付品を受け取った現地の人びとの写真をSNSで発信しています。そうしたアカウントを子どもと一緒にたまに覗いて、見覚えのある品がないか探してみることも、外の世界とのつながりを実感できる瞬間ではないかと考えています。
現在では、ここにあげた例だけではなく、使い道が明確で目的を子どもと共有しやすい募金や、貧困地域の子どもを一対一で支援するスポンサーシップの仕組みなど、自宅にいながらできる社会貢献の形がさまざまに構築されています。ご家庭の事情や考えに合う団体や制度の利用を考えてみることで、不登校の子どもが社会とつながる経験を増やすことも可能だと思われます。
不登校になって子どもが社会性が身につける機会を失い、将来困ったことになるのではないかと不安な保護者さんに、社会とつながり、社会の一員であることを子ども自身が実感する学びの選択肢のひとつとして、この提案が届くことを願っています。
「好き」で安心とつながりを育むサードプレイス
この記事を書いているBranchは、不登校・発達障害のお子さま向けの「学校外で友だちができる」Branchコミュニティを運営していて、以下のような特徴があります。
- 「学校行きたくない」という気持ちを抱え、家族以外の人との関わりが減ってしまった不登校のお子さま達が自分の「好きなこと」をきっかけに安心できる居場所や、友達ができるようなサービス。
- NHKや日テレなど多くのメディアにも紹介され、本田秀夫先生との対談や、厚生労働省のイベントの登壇実績もあり、サービス継続率は約95%以上。
- 小学校低学年のお子さまはもちろん、どんな子でも楽しく参加できるようにスタッフがお子さま一人ひとりに寄り添ったサポートを徹底。
Branchコミュニティは1ヶ月無料体験ができるので、ご利用を迷われている方は一度お気軽に無料体験予約をお申し込みください。
また、不登校や発達障害に関する情報を日々シェアしているLINEも運営しております。こちらも無料ですので、よろしければご登録ください。