Branchを利用しているお子さんは、様々なニーズを持っています。

・好きなことができる場所が欲しい

・好きなことはあるけれど、どうやって突き詰めていけばいいか分からない 等。


小学校6年生の谷朋優(たにともひろ)くんの夢は、ホワイトハッカーになること。

2年前からBranchメンター・梅内祐太さんのプログラムを利用し始め、好きなことをベースに学んでいます。

子どもの夢を見つけ伸ばしていくために、周りの大人は、どうサポートすればいいのでしょうか。

今回はオンラインプログラムの様子を拝見し、お母様のとも子さん、メンターの梅内さんにお話を伺いました。

 

ーー今日やっていたことを教えて下さい。

梅内さん:最近は継続して、AtCoder(https://atcoder.jp/?lang=ja)の競技プログラミング(※1)の過去問題を解いています。

プログラムのコードを書く時に、一番効率よく問題を解く方法を考えるのが、AtCoderの問題です。

今日はそのうちの一つ、重複検査(※2)の問題を解いてもらいました。

朋優くんは将来、ホワイトハッカー(※3)になりたいと言っています。

今やっている計算機科学(コンピュータサイエンス)の基礎知識・技術は、何をやるにも応用が効きくので、少しずつ進めています。

(※1)課題を解決するプログラムを、スピーディーかつ正確に記述することを競う、プログラミングコンテストの総称。コンピュータサイエンスや数学の知識を必要とする問題が多い。

(※2)数値の書き換えの有無を判断し、それぞれの数値が何個あるかを数える問題。

(※3)コンピュータに精通した知識と高度な技術力を活用し、システムやネットワークの安全を守りながら進化させていく仕事を担う人。


重複検査の問題を解いた、朋優くんの解答

 

小学校3年生で、大学生レベルの知識。

ーー梅内さんが、朋優くんと会ったときの印象は?

梅内さん:当時、朋優くんは小学校3年生。ある程度パソコンの知識があって、本当に好きなんだな、という印象でした。

会ったときには既に、Windowsのコンソール(※4)を開いてコマンド(※5)を実行していました。あまり普通の人はやらないと思うんですけど。


ーーやらないです。すごい。

梅内さん:自分がコンソールのターミナル(※6)をいじり始めたのが大学に入ってからだったので、僕より10年先に、もうここに達しているのかと強い衝撃を受けました。

今日やっていたことも、情報系大学のデータ構造(※7)アルゴリズム(※8)の授業で学ぶ内容です。


ターミナルのイメージ画


(※4)コンピュータの制御に用いられる、入力・出力の機能を備えた装置。

(※5)コンピュータに、特定の機能の実行を指示する命令。

(※6)キーボードから、コマンドと呼ばれる命令文を打ち込み、コンピュータに命令をするアプリケーション。

(※7)計算機科学において、データの集まりをコンピュータの中で効果的に扱うため、一定の形式に系統立てて格納するときの形式のこと。

(※8)数学、コンピューティング、言語学、あるいは関連する分野において、問題を解くための手順を定式化した形で表現したもの。

 

子どもの希望が出るまで待つ。本当にやりたいことが見えてくるまで、3年。

ーー朋優くんが、Branchにつながったきっかけを教えてもらえますか。

とも子さん:年長さんで科学の知識が増えすぎて、私が話し相手をしてあげられなくなってしまったんですよね。

詳しい方が話し相手になってくれるところがないかを探していたら、知り合いの方がBranchを紹介してくださったんです。

その時はまだ、こんなにコードを書くようになったり、ホワイトハッカーなんて考えていなかったので。代表の中里さんと相談して、気象予報士さんや、科学全般に詳しい方の紹介リストを頂きました。

相談したものの、急いでいたわけではなかったため、話はそこで止まっていました。

その間に、河合塾のK会でコンピュータサイエンスのコースを見つけました。

本人から「ここに入りたい」と言われかなり悩みましたが、家庭教師の方がいいと思い、もう一度Branchでメンターを探し始めました。

親があてがおうとした時は、何となくズルズルと日延べしてしまいましたが、この時は朋優から上がってきた希望だったので、切迫していたわけです。

本人の望みを叶えてあげたいと思った時は、トントン拍子に話が進みました。

梅内さんのプロフィールから、この方にお願いしたいと中里さんにお伝えし、今に至ります。

最初は独りで通信の本を読み始めて、通信やインターネットの仕組みを調べていました。

朋優のなかで、分野的に熟成してきたのがコンピュータだった。そこに至るまでに、3年かかりましたね。

 

大人は教えるのではなく、そばに寄り添い見守る。



ーーお二人は以前、日本テレビ『 the social 発達障がいの子どもの”好き”を伸ばす教育』に出演されました。

とも子さん:梅内さんは覚えていないかもしれませんが、「教えているつもりではなく、ただ寄り添い、一緒にやっているだけ」とおっしゃっていたのが、とても良かったです。

Branchのメンターをやっている理由を聞かれた時に、「発達障がいのお子さんに、純粋に興味があった」とおっしゃっていたのも印象に残っています。とても素敵なことだと思いました。

興味を持ってくれる人がそばに居る方が、良いと思うんです。


ーー梅内さんが発達障がいに興味を持ったのは、どんなきっかけがあったのですか?

梅内さん:興味を持ったというより、再認識した、というのが強いですね。

Branchを知る前は、発達障がいについてよく知りませんでした。調べるうちに、一つのものに興味が強い傾向があると分かり、小さい頃周りにいた、ちょっと変わった子を思い出しました。

例えば小学校で、自分の好きなものの話をしても、誰も理解してくれないお子さんがいるとします。
その子の興味のある世界が広がらなかったり、好きなことを伸ばす機会に恵まれないのは、もったいないと思うんです。

そういう社会的な課題に対し、自分にできることがあるならサポートしたいと思いました。

とも子さん:梅内さんも、わりと仕組みが好きだと思うので。発達障がいの人の、頭の中の仕組みが気になっているんじゃないかなぁと思っています。

梅内さん:うまくコミュニケーションできていないと感じる時は、相手は何を考えてるのだろうと、分析しているかもしれません。

例えば、発達障がいを持つ方のパニックは、普段の生活の中でイラっとした、ほんの些細なできごとが、ものすごく増幅されるようなイメージで起こるのではないかなと。
僕が勝手に想像しているだけなのですが。


ある日の訪問プログラムの様子

 

遊びは、個別化された基礎科目。Branchメンターはそこをすくい上げ、未来につなげる手助けをしてくれるから、安心できる。


梅内さん:ある日朋優くんのPCを見たら、Wireshark(※9)という、Wi-Fiのパケット(通信)を傍受できるソフトがインストールされていて驚きました。

それを使うと、実際にデータがどういった状態でネットワークを流れているかが確認できます。
僕が教えたとかではなく、彼自身がやっていました。

とも子さん:面白い(笑)。そんな遊びばっかりですよ。
気がついたら、朋優のPCにダークウェブ(※10)のTor(トーア)ブラウザ(※11)が入っていたことがあって。
何に使っているかは知らないんですけど。朋優にとっては全部遊びなんですよね。

(※9)通信内容を解析できるソフトウェア。

(※10)匿名性の高い、特別なネットワーク上に構築されたWebサイト。

(※11)匿名のネットワーク技術。The Onion Routerの略。

ーー梅内さんが、朋優くんとのプログラムで気をつけていることはありますか?

梅内さん:さっき谷さんがおっしゃったように、教えることはあまり意識していないです。朋優くんの方が知っていることもあるんですよね。そこは逆に学ばせてもらっています。

あと今の朋優くんのフェーズ的に、一つに絞って学ぶより、分野を幅広く、なんとなく知っているくらいのところに持っていく方が、良いんじゃないかと個人的に思っていて。
数年後に、今やっていることを思い出せるようになると良いなと思うんです。

とも子さん:これ、助かるんですよね。梅内さんは、子どもの好きな分野全体を知っているので。
ビジョンを持った方がそばにいてくれるのは、とてもありがたいです。

子どもからしても、親に「何くだらないことしてるの」とか「先にこっちをしなさい」とか、色々口を出されなくて済みますもんね。


ーーとも子さん自身は、Branchを利用して何か変わりましたか?

とも子さん:安心しますね。
朋優が何の遊びをしているのか、私には分からないので。彼の会話を理解するのは大変ですが、喋らせておいていいというか、このままさせておいていいという安堵感があります。

 

好きなこと=“学びのモチベーション”は、「知らない」と「知りたい」

とも子さん:昨日オークションで、仮面ライダーのおもちゃをゲットしたんですよ。

ーー朋優くんの好きなことは、どんなことでしょうか?

とも子さん:「知らない」ということが、すごく気になるんだと思うんです。

コンピュータサイエンス以外にも、仮面ライダーベルトもそのうちの一つです。ベルトの中心に回転する仕組みがあるので、その機構が知りたいようです。

機械、仕組み、どういう作りでなぜ動いてるのか。どんなもので出来てるのかを知りたいのだと思います。

梅内さん:カメラとかの分解も好きですよね。

とも子さん:日常会話でも、「知らない」のが耐えられないみたいですね。恥まではどうかわからないですけど、好きじゃないです。

あと、コンピュータOS(※12)はどうだったんですかね?梅内さんが目を向けさせたのでしたっけ?

梅内さん:もともと興味があったと思います。OSを作ることよりも、やはり、仕組みに興味があるようでしたね。

とも子さん:そういえば、Linux(リナックス)で何かやっていましたね。


ーー今出た、Linuxとは何ですか?

梅内さん:Linuxは、WindowsやMacOSのような、OSのカテゴリーの一つです。

Linuxというカテゴリーの中にも、Ubuntu(ウブントゥ)や、ArchLinux(アーキリナックス)など色々なOSがあり、その種類のことを、Linuxのディストリビューションていうんです。

朋優くんが自分で「Linux」を調べて、ディストリビューションの種類を知り、そこから選んでインストールしたりを、何度も繰り返していたようですね。
それは、僕が勧めたり教えたわけではありません。


(※12)Operating System (オペレーティングシステム)の略。 コンピューター全体を管理・制御し、人が使えるようにする。

(※13)コンピューターに必要な最低限の基幹部品を、1枚の回路基盤に搭載した超小型コンピューター。

 

子どもの世界は、人を通して外に開く。学び成長する力は与えられるものではなく、一人ひとりに備わっている。

ーー梅内さんのプログラムは、1回90分、月に1〜2回と伺いました。プログラムを利用する前と今の朋優くんの変化があれば教えてください。

とも子:朋優は人見知りをしたり、緊張するタイプではありませんが、以前は、家族以外の人と話すことがあまりありませんでした。

今は梅内さんと、自分の好きなことで会話をしてもらえるので。人とのコミュニケーションに対するハードルが下がったと感じます。

自分の狭い世界が、ちょっと広がっているというか。外に向けてお話できるようになっている気がします。

子どもはみんなそうかも知れないのですが、特に、朋優の変わり方はすごく早いと感じます。幼稚園、療育、小学校の支援の先生も皆おっしゃっていました。

小さい頃、手をヒラヒラ振ったり、ずっとプロペラを見ていた時期がありましたが、今はとてもそうには見えない。動物も、全く触れなくて怖がっていましたが、触れるようになっていますし。
受けているプログラムの影響も含めて、とにかく変化だらけです。

 

ーー朋優くんの変化は、とも子さんと一緒に色々なところにでかけたり、様々な経験を共有しているから出てくるのでしょうか?

とも子さん:本人の心の中で起こったことなので、私は分からないのですが。なにか片がつくのだと思います。年齢も含め、彼の成長だけです。

本人が楽しいことをして受け入れられているので、成長が損なわれたり、傷つけられたりしないのだろうなと思っています。

 

これからの社会は、得意なことで価値づけしていくようになる。

とも子さん:朋優は書字障がいがあり、学校の勉強とどう向かい合っていけば良いかがずっと引っかかっていました。
そうしたら梅内さんが、「書ける人が書けば良いんじゃないか」というようなことを、さらっとおっしゃって。

梅内さん:書けなくても、他のことでどうにかなる世界になりつつあると、個人的に思っているんです。音声認識で、しゃべった内容を文字に変換することもできますし。

書けるか書けないかの差は、わりと埋まっていくんじゃないかなと思っていて。
そういう意味では、Branchが大切にしているように、得意なことを伸ばし、そこで価値づけしていったほうがいいんじゃないかなと思っています

とも子:私の知らない専門の世界で、どんな人がどのような仕事をしているかを知っている方がいてくださるのは、とても心強いですね。

朋優くんの「遊び」を面白がりながら、対等に向き合うとも子さん。

子どもの多様性を受け入れながら、そっと手を差し伸べる梅内さん。

学年や年齢にとらわれず、主体的で自由に学ぶためのヒントは、大人の関わり方にあるのかもしれません。

 

 

 

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ライター:芹田枝里さん