気持ちの切り替えに、時間がかかる。

環境の変化が、苦手。

こだわりが、強い。

様々な個性から、学校に馴染めないお子さんは少なくありません。

小中学校の不登校児童生徒数は年々増え続け、2019年度には16万4528人に登っています。

 

不登校児童生徒数の推移

文部科学省「平成30年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」より


Branch roomに通うAくん(仮名)は、小学校3年生。

入学当初は学校へ行き渋ることが多く、早退して自宅やおばあちゃんのお家で過ごす日もありました。

それが今では、学年単位の行事に自分から参加するようになり、お友達の輪も広がっているそうです。

お母さんのSさんは、当時のAくんに対して、「学校に行きたくない」気持ちをどこまで汲んで良いのか、このままでは社会人として生活できないのではないかと、悩むことも多かったと振り返ります。

ご兄弟の子育て経験や、お仕事を通して築いてきた価値観と葛藤する中で、Branch roomと出会い、1年数ヶ月が経ちました。

その間、Sさん親子にはどんな変化が起きたのでしょうか。Sさんにお話を伺いました。


ーーAくんは、学校のどんなところが苦手だったのでしょうか?

登校班、朝礼、行事の集団練習。「気をつけ」のように、同じことを繰り返す練習が好きではありませんでした。

保育園の頃から、集団に入るまでに時間がかかったり、環境の変化が苦手で。

運動会の練習の時期はきつかったですね。練習も出たくない、居場所もないと感じるようになり、廊下も歩けなくなってしまったんです。

それなら教室を居場所にするしかない、私が友だちになればいいんだと、毎日一緒に登校していました。


ーーBranch roomを利用し始めたきっかけを教えて下さい。

私の中で、そこまでして学校にいる意味はあるのか?でも、もし行かないとしたらどうしたらいいの?という葛藤がありました。

万が一学校に行かないと決めたときの居場所や、その場合の教育を私一人で考えるのは、とても苦しいと思っていて。

「不登校 行き渋り」などひたすら検索して、余計暗い気持ちになってしまう日々を過ごしていた頃、Branchにたどり着きました。

Branch room が、息子にとって安心して過ごせる新しい居場所になったらいいなと利用し始めたのが、1年生の12月です。


ーー今、Branch roomをどのように利用していますか?

ひと月に、個別プログラム(※1)を1回、集団プログラム(※2)を1〜2回利用しています。

個別プログラムでは、代表の中里さん、河野さんお二人に担当してもらっています。

中里さんとは、Nintendo Switch(※3)でマインクラフト(※4)などのゲームで遊んでもらい、河野さんとは、その日に気になったものや、新しくBranch roomに入ったプログラミングゲームなどに挑戦しています。

(※1)お子さんに合わせてカスタマイズをしながら”好き”を見つけたり、一緒に”好き”を育むプログラム。

(※2)科学実験、ゲームなどを少人数で楽しむプログラム。

(※3)任天堂が2017年3月3日に発売した家庭用ゲーム機。

(※4)ブロックを配置して建築物等をつくったり、人物を操作して冒険を楽しめるゲーム。

集団プログラムでは、科学実験やゲーム会に参加しています。

ゲーム会では宮脇さんを中心に、数人で動画を録ったり、マインクラフトが得意なお兄さんに教えてもらったりしています。

マリオメーカー(※5)の日は「◯◯くんや△△くんも来るよね!」と、とても楽しみにしています。

(※5)「スーパーマリオブラザーズ」発売30周年として発売された、スーパーマリオのステージを自作して遊ぶクリエイトゲーム。


 

”何を”楽しんでいるかという視点に気づけたら、ゲームを肯定できるようになった。

最初の面談で、中里さんに「息子さんは何が好きですか?」と聞かれたとき、「ゲーム」と答えられなかったんです。


ーーそれは、なぜだったのでしょうか?

息子は色々なものに広く浅く興味を持つので、ゲーム一つに絞れなかった事と、ゲームの世界に入り込み過ぎてしまうのではないか、という不安があったのだと思います。

私の母はゲームは悪いものと思っている人なので、ゲームをする事への罪悪感が私にあることにも気づきました。

でも今のゲームって、コミュニケーションツールなんですよね。

Branchには、ゲームやYouTubeの”何を”楽しんでいるかまで見てくれる視点がある。
そこはもう、自分では思いつきもしないというか。ゲームが好きです以上の何があるの?と思っていたので。 個別プログラム後、「息子さんは、ゲームで一緒に対戦している”人”に思いを馳せているようです」とレポート(※6)を頂き、目から鱗が落ちました。

オンラインゲームでメンバーが集まらないと、「皆どうしたのかな」と気にするみたいで。

知らない人へ思いを馳せる様子を伝えてくださり、誰かと一緒にゲームをすることが好きなのだと気づき、ゲームを肯定できるようになりました。

(※6)保護者にお渡しする、プログラム実施内容をドキュメンテーション化した「好きなこと発見シート」。上記は一例。


 

 

自分の“好き”を大切にしてもらうと、人の“好き”も大事にできるようになる。

 

 

ーーBranch roomを利用していく中で、Aくんにはどんな変化がありましたか?

1年生の終わり頃から、自分の興味関心に関わらず、お友達の「好きなこと」についてよく話すようになりました。

学校でも、好きなゲームのバグ(※7)動画をYouTubeで見つけて、友達と報告し合うなど、コミュニケーションの輪が広がっています。

これはBranch roomで、年齢や性別に関係なく、好きなことをツールに一緒に楽しむ経験を積めていたからこその変化だと思っています。

友達=好きなことでつながれる関係と、肯定的に捉えられているような気がするんです。

Branchって肯定しかないじゃないですか。


ーーそういう場って、なかなかないですよね。

本当に。Branch roomに行けば必ず、心から「いいね」と言ってもらえる。敢えて言われなくても、それをずっと感じ取っていたと思うんです。

「自分は自分のままでいいんだ」という土台。自己肯定感が底上げされたと、感じています。

(※7)プログラムに存在する不具合で、予期せぬ動作を引き起こすこと。


お母さんも変わっていく。運動会なんてやめて、サイクリングに行こう!

この1年間で息子もですが、私も変わったんですよね。

例えば運動会。私の中で休むという選択肢は全くなくて。1年生の時は、仕事が休みの日は一緒に練習を見学していました。

練習は殆ど出なかったのに、当日はスイッチが入ったみたいで、全部参加したんです。本人としては達成感があったみたいで、とても元気でした。

でも私は、サポートに疲れてしまって。2年生の運動会には出ませんでした。

上の兄弟二人はずっと運動会に出ていたし、その日のためにクラスのみんなと頑張ろう、という子育てをしてきた私にとって、とても大きな決断でした。

「去年もあんなに頑張ったんだから」と本人の気持ちを乗せて、参加することもできたかもしれない。でも、嫌な時間の延長線上にゴールを定めて、そこにエネルギーを使わなくてもいいなと、やっと思えたんですよね。

その代わりに、公園でサイクリングをしました。


ーーいいですね!明るい。

行けなかった...しょぼん、となるのが嫌だったので(笑)。


兄の友達を巻き込んで遊ぶ。好きでつながるコミュニティができ始めた。

ーーNintendo Switchのゲームだと、Aくんは何が好きですか?

今はスプラトゥーン(※8)をやりたいと言っていて。次男の友達に「一緒にスプラトゥーンをやってくれない?」と、私から誘いました。

Branchと出会っていなければ、兄の友達を巻き込もうなんて思わなかったかもしれません。

「好きでつながる」ことが私の中ですごく自然になったから。それが実現できて、息子もとても楽しんでくれています。

春休みになったら遊びに来てくれる?なんて、自然と次の約束もできて。学年の垣根を超えて遊べている状況が新鮮で、私も嬉しいです。

(※8)インクを撃ち合うアクションシューティングゲーム


ーーAくんの気持ちに寄り添いながら、Sさんご自身も変わっていける。とても素敵な親子関係ですね。

今までのやり方で試行錯誤しても、どうにもならなかったんです。

怒ってみたり褒めてみたり。
色々な手を使ってみましたが、息子と対話しながら、本人の気持ちをどう切り替えるかが大事なのかなと。時間をかけて分かってきました。

 

自己肯定感は、自分から「やってみる」気持ちをゆっくり育む。

ーーその後Aくんは、学校でどんな様子ですか?

運動会後の学芸会では、自分から「練習を見学する」「やってみる」と言い、先生も驚いていました。

見学中、好きな本を読んでいることもありましたが。集団練習が苦手な息子にとって、みんなと同じ空間の中で過ごそうと自分から言えたのは、とても大きい出来事です。

人や環境にも恵まれたのだと思います。
先生は「Aくんは、自分の気持ちが変われば動ける」と信じて、強制せずに待ってくれますし、周りのお友達も、息子のことを受け入れてくれているので。感謝しています。

気持ちが安定していると、親や先生が強制しなくても、自分からやってみようと思う時が来るんですね。

Branchが大事にしてくれていることは、何かを始める出発点になると思えるようになった。

ーー学校に行く・行かないもそうですが、社会からは「嫌なことから逃げてはいけない」という同調圧力のようなものを感じることがあります。
そのあたりについて、今、どのように考えていらっしゃいますか?

私の周りには、思い通りにならない事に対して、割り切りながら仕事をしている人が多かったんですよね。

仕事をして生きていくには我慢も必要、という個人的な価値観から、息子が納税者になるにはどうしたらいいのだろうと、不安になったこともたくさんありました。

でも今は、Branchの考え方や関わる方々に触れて、「好き」から派生する仕事や、そこを大事にしてスタートできることもあると思えるようになったんです。

既存の小さな大人の世界に適応できなくても、これからはきっと、私には想像もできないような社会になっていくと思うので。

親の狭い価値観で、子どもの将来を決めない方がいいんですよね。

みんなと一緒にできなくても、自分の意見を持って主張しようする息子の良いところを、伸ばしていってほしいと思っています。


 

Branchではお子さまの「好き」や得意を伸ばすサービスを提供しています
ご興味があるかたは、こちらへ。

ライター:芹田枝里さん