“幼い頃から色々なことに疑問を持ち、毎日のように父や母に質問をしていました。
たとえば、学校で分数について習ったときは、
「なぜ分数の割り算は、逆数をかけるのだろう」
「どうして2で割っても、2分の1をかけても同じ答えになるのだろう」
と不思議に思い、理由が分かるまでとことん考えました。考えることに集中しすぎて、気づいたら知らない場所にいた、なんてこともありましたね(笑)”
そう話すのは、Branchのメンターであり、現在東京大学の理学部で物理の研究を行っている原さん。
ご両親は、好奇心旺盛な原さんと向き合いひとつひとつの疑問について一緒に考えてくれたそう。その経験が現在の原さんの好奇心や探求心の源となっています。
今、原さんはメンターとしてBranchのお子様と関わってくれています。
今回は、興味関心をもった事柄についてとことん突き詰めてきた原さんの幼少期や、Branchで実際に行っているプログラムの様子についてお話を伺いました。
問いをふくらませていくことで、新しい世界を知るきっかけに
原さん:Branchでは、お子様と数学や物理、科学の話をよくしますね。
プログラムでは、ただ知識を教えるというよりは、「なぜそうなるのか」を一緒に考えることを大切にしています。
先日の6年生の男の子とのプログラムでは「熱」について一緒に考えました。
水を沸騰させると、泡が出てきますよね。
「あの泡はいったい何だろう」という問いからプログラムがはじまったんです。
泡の正体は、水蒸気。
でも、その知識を伝えるだけで終わらず「そもそも水蒸気ってなんだろう」とさらに問いをふくらませていきました。
お子様が考えるきっかけとして説明したのは「分子」です。
実は、水を含むあらゆる物体は分子という細かい粒子がお互いに引き付き合ってできているんですね。
その分子が激しく振動すると熱をもつようになる。
つまり、分子が激しく振動した結果水が熱くなる=沸騰するという現象が起こるのです。
水蒸気は、水が熱くなる過程で分子の振動が激しさを増し、結びついていたはずの分子が解き放たれて自由に飛び回るようになったもの。
そんな根本の仕組みを知っていると、ほかの疑問についても分子の動きを参考にして考えることができるようになります。
当日も、分子を出発点にしながら「熱いものに冷たいものを近づけると、冷めるのはどうして?」「気圧が高いところから低いところに流れるのも同じ原理なのかな?」とお子様やお父様、お母様と一緒に疑問をさらにふくらませて考えていきました。
実は、このお子様は家族以外の人と話すことが苦手で、当日もとても緊張した様子でした。
でも興味がある内容だったからか、話しかけるとうなずいてくれたり、興味深そうに聞いてくれたりしていました。
あとからお母様に聞くと「楽しかった」と言って、当日私が出したクイズをプログラム後もずっと考えてくれているとのこと。嬉しかったですね。
科学的な説明を100%理解してもらうことが大切だとは思っていません。
あえて、大学レベルの知識や科学哲学的な問いを投げかけてみることもあります。
そのなかで「こんな世界もあるんだな」と感じてもらったり、好きや得意なことをきっかけに他の人と関わる機会にしてもらえたら、と思います。
※原さんのプログラムについてお母様からいただいた感想を記事の最後に掲載しておりますので、ぜひご覧ください。
疑問に思ったことを毎日考え続けた幼少期
僕自身、幼いころから色々なことに疑問を持ってずっと考えているような少年でした。
例えば、学校で分数について習ったときは「なぜ分数の割り算は、逆数をかけるのだろう」「どうして2で割っても、2分の1をかけても同じ答えになるのだろう」と不思議に思い、理由が分かるまでとことん考えました。
そのほかにも、平方センチメートル(㎠)はセンチメートルの上に2と書く。
それならば、3と書いたら立体的な広がりを表す単位になるのかな・・・など、学んだことから自分で発想を広げていくことも好きでしたね。
もちろん数学にも興味がありましたが、いちばん気になっていたのは哲学的なこと。
例えば、他者に危害を加えたり、悲しませたりすることはなぜいけないのか、そこにどのような根拠があるのか、など答えのない問題をずっと考えていました。
あまりにも考え事に集中するので、気づくと知らないところにいたり、学校に行くのにランドセルを忘れていたり…なんてこともありました(笑)
大学教授との出会いが「広い世界」を知るきっかけに
父や母は私が質問をすると毎回のように「それはこうじゃないか」と自分たちの意見を返してくれました。
それが楽しくて、よく疑問をぶつけては議論をしていました。
後から聞くと、当時は質問に対して自分たちなりの意見を考えるのが大変だった、と(笑)
でも、せっかく興味をもったことをつぶしてはいけないと、できるかぎり答えようと決めていてくれたそうです。
ある日、すごく難しくて何日考えても分からないような算数の問題に出会ったんです。
苦戦している私の様子を見た母が「大学教授の知り合いがいるから会ってみる?」と言ってくれて。
振り返ってみると、私にとって大切な経験となった時間でした。
大学教授の方とは少しお話しただけだったのですが、何を聞いても答えてくれたんですね。
それがすごく衝撃的で…。
どこまで知識があるのか底知れないような深さや奥行きを感じました。
そのとき「ああ、世界って広いんだな」とふと思ったんです。
そのときはすでに算数については周りの大人よりものめりこんでいて、知識もあった。
でも大学教授の方と会ったことで、これからも無限に学ぶこと、やるべきことがあるんだろうなと感じたんです。
すると、今まで抱いてきたような息苦しさのようなものが消えて、安心感が生まれたんですよね。
視野が広がった瞬間でした。
父と母はそんなふうに必要な機会をさりげなくつくってくれていました。
とにかく色々な経験を積んで、自分なりに何か感じてくれたらと考えていたようです。
1日12時間。ゲームにのめりこんだ経験が今に生きていること
算数以外にも、一時期はゲームにはまっていました。多いときだと1日12時間くらいやっていたこともありました。
でも父と母にそれを強く止められることもなかったんです。
実はたまたま母が大学生のときにゲームにはまってた時期があったらしく(笑)
だから「ゲームなんてくだらないからやめなさい」と否定されることもありませんでしたね。
そのおかげでよかったなと思うのは、問題解決思考が育ったこと。
ゲームって資源を獲得して、最適な形で活用するサイクルを作らなきゃいけないじゃないですか。
あとは、目標を達成するには最短経路で行かないと絶対に間に合わないぞ、とか、そもそも最短経路で行くためにはこのタイミングでこれをやっておかなきゃいけない、など考えることがたくさんある。
それをスピード感を持ちながら、思考し続けることが必要になってきます。
これって数学の問題を解くのにも似ていて。
考える事に慣れているとあらゆる場面で役に立つんですよね。
一見無駄なことに見えても、実は将来役に立つこともある。
そう考えると好きなことを止めずに見守ってくれていた両親には感謝ですね。
子どもたちに影響を与えるだけでなく、自分自身もワクワクし続けていきたい
Branchでお子様に会っていると、下の世代にエース級の子たちがいることをとても感じるんです。
それが単純に嬉しいんですよね。
そして、下の世代に自分が少しでも影響を与えていける、関わっていけるというのはとても面白いなと思います。
よい影響になるのか、悪い影響になるのかはわからないですが(笑)
それも含めて楽しみです。
同時に、下の世代に影響を与えるだけでなく、自分自身ももっと色々なことを知って、挑戦していきたいと思っています。
私が大学で勉強している理由は、結局「世界について本当のことを知りたい」ということに尽きるんですよね。
物理も哲学も数学も、とにかくずっとやっていって、自分なりに理解していきたいですし、深めていきたいんです。
新しい世界に踏み込んでいくときのワクワク感を、自分自身も一生感じて生きていきたいなと思います。
(取材:中里祐次 編集:岡本実希)
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【原さんのプログラムを受けたお子様のお母様からのメッセージ①】
原さんとの時間は、家族みんなにとって毎回とても楽しく、感謝しています。
息子は幼稚園の時に広汎性発達障害の診断を受け、就学相談の後に小学校に入学しました。
しかし入学後すぐに不登校になり、さらには緘黙の二次障害を起こして家族以外とは一切会話ができなくなってしまいました。
その後いくつかの習い事には通いましたが、先生や他のお子様とは一切会話がないままでした。
また通院していた病院では緘黙への対処法はないと言われて、どうしたものか困り果てていました。
その頃Branchのサービスを知り、メンターさんの派遣をお願いしてみることにしました。
メンターさんは大学生なので、習い事の先生より歳が近いこと、また家庭に訪問して頂けるので慣れた環境であることなどから、息子は少しずつ心を開けるようになりました。
Branchは家庭教師とは違って、息子の興味や関心に合わせた関わりをお願いできるのがありがたいところです。息子も「楽しかった!」と言っていましたし、出してもらった論理パズルの問題をメンターさんが帰ったあともずっと考えていました。
毎回、論理ゲームや数学などを通じてメンターさんと楽しく時間を過ごせていることが親としてはとても嬉しいです。
家ではよく話し、よく冗談を言うひょうきんな性格なので、遊びを通して心を開いて素の部分を出せるようになるといいなと思います。
【原さんのプログラムを受けたお子様のお母様からのメッセージ②】
地方に在住なのでBranchさんではビデオチャットでお世話になっております。
自閉症スペクトラムの息子は小学四年生。
数学を得意としています。
時には大学の領域の難しい数学の話をしたり、算数オリンピックにも挑戦している息子の数学の話には、付き合ってくれる友達も大人もなかなか見つかりませんでした。
Branchさんでは、地方にいながら数学に詳しい方々が息子の疑問に答えてくれます。
親では到底答えられない疑問ばかり。
東京大学の学生さんにお願いしているのですが、疑問を理解するために必要な微分積分をわかりやすく教えてくださったり、算数オリンピック問題も本人が解けるように導いてくださいます。
最初は緊張してあまり声も出ていなかった息子がだんだんと「そうか!わかった!」と目が輝いているのがわかりました。
極端な興味の偏りがある子供は、特に地方だと仲間を見つけることは難しく孤立しがちです。このようなサービスはとてもありがたいと思っています。
保護者支援のサービスにも参加しています。
いつでもどこでも臨床発達心理士さんなど専門家の方々に相談ができる環境があることも、とても心強く思っています。
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