発達障害や不登校のお子さんを持つ保護者の方々は、どんな悩みを抱え、どんなふうにお子さんと関わっているのでしょうか。
発達障害・不登校の親子向けにオンラインフリースクールやメンターサービスを運営するBranchでは、サービスをご利用の保護者のみなさんにインタビューを行い、これまでのご経験を詳しくお聞きしています。
この記事では、現在小学5年生・女の子の保護者の方にお話いただいた内容をご紹介します。
子どものプロフィール
名前:Aさん
年齢:10歳・小学5年生
不登校の期間・様子: 4年生の11月から不登校。週1回のみ登校し、30分ほどスクールカウンセラー(以下SC)と個別の関わりをもっています。
発達障害の診断・特性:診断なし
好きなこと:マイクラ、ポケモン、アニメ、ジグソーパズル、手芸(刺繍、刺し子)など。何かをつくることが好きです。
人に注目されるのがあまり好きじゃない子です。幼い頃から、集団の場やイベントごとでは緊張して動けなくなってしまうことがありました。
幼稚園の頃から「ちゃんとやらなきゃ」という意識が芽生えたようで、すごく真面目です。特に学校では手を抜いたり気を抜いたりすることができず、「授業参観に来ないで。お母さんが来ると集中できない」と言われたこともありました。
一方で自分の信念みたいなものをすごく強く持っていて、自分が「やる」と決めたことはしっかり最後までやり切る力を持っています。例えば、駅から自宅まで重たいスーツケースを自分で運んだり、モノレールの駅5つ分を歩いて帰ってきたり、「正直そこまでしなくても…」と思うこともありますが、感心します。
外ではすごく頑張ってしまうのだと思いますが、家庭生活で大きく困ることはなく、受診や診断には至っていません。
不登校になったきっかけ
高学年になって頑張らないといけないことが増えたようで、勉強の遅れはなかったのですが「間違っちゃいけない」という意識が強まっていたようです。
もともとおとなしく、「静かに疲れていく子」なんです。本人のなかで我慢していることが周囲からは気づかれにくいし、本人も文句を言わず自分でなんとかしようとしてしまいます。
そんななか、3年生の3月からコロナ禍での休校、4年生の6月から任意の分散登校となりました。
本人は心配性で「コロナにかかりたくない」という気持ちもあり、「学校が本格的に始まるまでは休む」と決め、自宅で過ごしました。ところがいざ再開となると、クラス替えもあり担任の先生も変わっている状態で、クラスメイトはほとんどが分散登校をしていたので、ギャップが大きくとても緊張してしまったようです。さらに、本人は学校では「ダメな自分を知られたくない」といった気持ちも強く、かなり頑張ってふるまっていたようでした。
学校に行けなくなったダメ押しは、音楽会のピアノ伴奏を立候補で募り、オーディションで決めるとき。
少しピアノは弾けるので、立候補して楽譜をもらってきたものの、家で見てみるとレベルが高くて楽譜も読めない状態でした。本人は「立候補したからにはオーディションに出なきゃいけない」という思いに追い詰められており、母親からは「やっぱりやめますって一緒に言うよ」と伝えましたが…。しっかりした自分を演じて来たぶん、どうしても言えなかったみたいです。
「友達からなんて言われるんだろう。怖くて行けない」と言って、次の日から学校を休みました。
不登校になってからの保護者の対応
兄が先に不登校だったので、不登校になる前から本人には「行ってもいいし行かなくてもいい。休みたくなったら休んでもいい。A自身が選んでいいんだよ」と伝えていました。休んでからも、その言葉は同じように伝えました。
そうは言っても、なんとなく「(兄は不登校だからせめて)Aは学校に行っててほしいな」という私の思いを汲み取って、当時は頑張って行っていたのかもしれません。宿題も「なんで私だけ」と思っていたかも…。
休み始めてすぐ、放課後に週一回登校する、ということになりました。しかし担任に「次は朝から来れる?」「いつからならみんなと勉強できそう?」と聞かれるので、答えられないのが辛そうでした。学校に行けない理由を聞かれると言葉にできず、じわっと涙が出てきてしまう状態…。
結局、放課後登校もできなくなりました。今振り返ると、もうちょっと早く止めてあげられたらよかったなと思います。
兄は通級にはずっと行っていたので、通級の先生に相談してみることにしました。そこで、「もしかしすると、いつか行きたくなるかもしれないから、誰かと繋がっていたらいいかも。SCはどう?」と助言をもらいました。
それを学校側へお願いすると上手くいきました!SCとは話す訳ではなく、30分塗り絵を一緒にします。そのうちに行くことが楽しくなってきたみたいです。「ここはこの色で塗りたいんだ」とか「なんでこの色を選んだのか」とか、ポツポツ話すようになってきました。母親も同席していましたが、1年弱ほど経過して、SCと2人だけでも過ごすことができるか試し、つい最近できるようになったところです。
また、5年生になってからの担任の先生は「学校なんて来なくてもいいからね!」と言ってくれたので、本人も安心できたようです。SCとの面談の後、職員室の前で担任とマイクラの話をしています。
でも、同じクラスの子に偶然会うと、帽子を深くかぶったり隠れたりします。SCへ会いに行く時も、生徒には会わないように時間をずらしている状態です。
不登校の生活上の困りごと
母子分離不安
学校へ行かなくなってから、1人で留守番することができなくなりました。今はYouTubeを見て気を紛らわしていれば、なんとかできています。
一時期はずっとYouTubeを見ていたので、「自分で休憩をとろう」という話をしたら泣き出したことがありました。「YouTube見れなくなったらひとりで留守番できなくなる」と思ったようです。
また、高学年になったので、一緒の布団で寝ることや一緒にお風呂に入ることを1人でできるようにしようと一度に始めたら、さらに不安が強くなってしまいました。その状態から一旦すべて元に戻し、安心と思えるところから始めていきました。
今は寝付くまで一緒にいれば、その後は1人で眠れます。先日は、タイミングが合わなくて先に布団に入った本人の様子を見に行ったら「もう眠れそうだから来なくていい」と言われ少し変化を感じました。
お風呂は、途中どこかのタイミングで重なっていればOKになりました。うちは夕飯前にお風呂なのですが、母親の帰りが遅くなって食事の準備が遅れそうな時は先に入っていてもらいます。
そういった小さな変化を、翌日などに振り返ることを大事にしています。本人も「意外とできた」と自信をつけ、だんだん当たり前になっていけばいいなと思います。
きょうだい間のトラブル
2歳上の兄がいるのですが、緊急事態宣言で休校になった時は距離が近くなってしまい、兄にちょっかいをかけてよく衝突していました。兄の方がストレスで前髪を抜いてハゲができてしまいました。
今は2人とも不登校生活ですが、程よい距離を保てるようになり、トラブルも減っています。
対応としては、まず「『嫌』『やめて』を相手に2回以上言わせたらだめ」という家庭内ルールを決めました。くすぐりやハグなど親もしつこくやってしまう場面があったので、自戒の意味も含めて、お互いに声を掛け合うようにしていきました。
また、本人に兄の特性を説明し、「急に触られることや、自分のパソコン画面を見られることが嫌みたいだよ」「自分がいいと思っていても、相手が受け入れてくれるかは別のことなんだよ」「感じ方はそれぞれ違っていいんだよ」「家にいるから、お互い気持ちよく過ごしたいよね」と伝えていきました。暇になるとちょっかいを出してしまう面もあったので、本やパズルなど熱中できるものに取り組むよう促しました。
学校との関わり方、交渉
先生と家庭で不登校に対する考え方の違いがあると、話し合いの場を持つだけで疲れてしまいます。こういう場はこれまで何度も経験してきましたが、担任と保護者の他に中立的な立場の人を入れるべきだと、改めて感じました。
うちの場合はSCが入ってくれましたが、例えば養護の先生とか、距離が少し離れている人がいいと感じます。保護者と担任は同じくらい本人との距離が近いので、それとは異なる客観的な視点で場をまとめてくれる進行役のような存在がいると上手くいくことが多いです。2者で話すとお互い黙り込んでしまう場面が何度もありますが、3者だと「これからどうしていくか」スムーズに話が進みました。保護者も感情が高ぶってしまうこともあるので、冷静に話せるという利点もありますね。
お子さんの居場所の確保
不登校になってすぐ、外と繋がる場所を探し今も探していますが、子ども(全く知らない子たちでも)が集まる場所は苦手なようです。
市の適応指導教室へ見学に行きましたが、先生と2人なら大丈夫でも、他の子が来るとサッと私の後ろに隠れて動けなくなりました。
学校以外の居場所としては、LITALICOワンダーに3年生の頃から行っていて、すごく楽しいみたいで今も週1回通っています。今は3Dプリンターで、マイクラのネザーの世界を作っています。形ができたら色をのせて、納得いくまで模様を再現します。作業しながらメンターさんと雑談したりもするようです。
今後も、居場所を増やしたいなぁとは思っています。先日、本人と話をしたら、「自分のやりたいことを集中してできるところがいい」と答えが返ってきました。
Branchとの出会い
2-3年前、兄が学校を休み始めた時に「不登校 フリースクール」などをネットで検索して、Branchの存在は知っていました。当時オンラインコミュニティはなく、メンターとのビデオチャットはイメージが湧かず、代官山の教室まで行く自信もなくて…。
Aが不登校になったとき「楽しい時間を増やしてあげたい」と思って本人に希望を尋ねたところ、「だれかと一緒にマイクラをやってみたい」という返答でした。YouTubeのマイクラ実況が好きで、わいわい集まっておにごっこやクイズをするのが楽しそうに感じたようです。それができるところを探しているときに、またBranchと出会いました。
初回のオンライン体験(※現在は実施していません)と保護者面談では、親子ともにすごく緊張していました。
中里さんが好きなものを聞いてくれて、好きなアニメを教えたら、「見てみます」といって興味を持ってくれたのが嬉しかったみたいです。マイクラもオンラインで繋いで、始まったとたんに声のトーンが変わったので、私はびっくり(笑)「おお~!こんなハキハキと話すところ見るのいつぶりだろう。またやらせてみたいな」と思いました。
Branchを利用し始めて、まずはメンターさんと1対1でマイクラをして、自信をつけることができています。けれど、本人の夢は「みんなでわいわい遊びたい」ということ。
オンラインコミュニティでマイクラのイベントに参加したいけれど、最初は不安が強く、保護者会で「どうしたらいい?」と相談しました。まずは保護者自身が参加してみて、本人にもなんとなく雰囲気を知ってもらえたらと助言を受け、『保護者マイクラ会』に参加しました。途中で「お母さん酔っちゃうから途中で代わってくれる?」と本人にバトンタッチすると、とても楽しそうにしていました。それ以降は積極的にイベントに参加しています。
メンターとオンラインコミュニティ、どっちかだけじゃだめで、どちらもあって今のAがあるなぁと感じています。
現在の過ごし方
Branchを利用している子が兄にDMをくれたことをきっかけに、普段もマイクラで一緒に遊ぶようになりました。Aは最初は様子を見ていましたが、徐々に「次は私も一緒に入って遊びたい」と自分からメッセージを送れるようになりました。途中からさらに別の子も入ってきたり、遊ぶワールドも変わったりと、世界が広がっていると感じます。
最近の過ごし方は、Branchのお子さん達からマイクラのお誘いがあればやる、なければYouTubeと読書、たまに思い出したように手芸、といった様子です。
SCとの関わりやLITALICOワンダーでの取り組みを通して、自分自身「色にこだわりがある」ことが分かったようで、「色を選んでいる時間がとても楽しい」と言っています。
お子さんの変化
お子さんの”変わったな”と感じる部分
不登校になって人と関わる機会がなくなっていたので、マイクラでみんなと一緒に遊んでいるのがすごいと思います。なかなか自分の意見を言えない子ですが、マイクラ会の中だと言えるんですよね。「チェスト作っときました!」とか、先回りして考えて行動できる。好きで自信を持てるものだったら、堂々と意見を言えたり、相手を助けたりできるんだなぁと感じています。
それと、先日はSCが「Aさん変わった気がする」と言ってくれました。話す声のトーンが力強くなったので、「何かありました?」と(笑)Branchでマイクラに取り組んでいることを伝えたら、「そんなこともできるんですね~」と感心されていました。
Branchメンターの初回利用の時から、「こんにちは、おねがいします」という細い声と、マイクラの中でしゃべるハキハキとした声が全然違ったんですよね(笑)その積み重ねで受け入れてもらえた経験が、今、リアルの生活にも繋がってきているんだなと感じます。
目標や進路について
先日、担任の先生が、「Aさんには『自由の森学園』が合うんじゃないか?」と提案してくれたんです。調べてみると、美術で染色の時間があり、糸をつむいだり、染料も植物から作ったり…という授業内容に本人も興味を示しました。オンライン説明会に参加するなど、リサーチしているところです。
保護者のねがい
私自身、まず本人の新たな一面を発見できてよかったと感じます。今まで、おとなしくて消極的な子というイメージで、好きなことを通してこんなにイキイキする姿は知らなかったんです。
学校を休み始めた頃は、「何がすき?」「どうしたい?」という問いに対して「分からない」という状態だったのが、今は自覚できるようになってきています。自分の好きなこと・楽しいことが具体的になってきて、やっと「再び動き出せるスタート地点」に立てたかな、と感じます。
これからは、自分の強い思いを大事にして、少しずつでいいので進んでいってほしいなと思います。親としてもそれをサポートできるようにしていきたいです。とはいっても、志望する学校は通学に時間がかかるので、果たして通えるのかどうかとか、不安なところはまだいっぱいありますが…。
不登校で悩んでいる保護者の方へメッセージ
まずは「気持ちを教えてくれてありがとう」とお子さんに言ってあげてほしいです。
世間では、「行くのが当たり前」という感覚がまだすごくあるので不安だと思いますが、とにかく休ませてあげてほしい。
学校が終わるまで自宅のベランダの下にずっといた子とか、心を壊して入院してしまった子とかの話を耳にすると、親も不安だけど、子どもって本当につらいんだなと…。親が思っている以上に、子どもにとって「学校」はすごく大きい存在なんだなと改めて思います。
自分に言い聞かせている部分もありますが、学校ってより効率的に勉強を教えるためにあるもので、子どもを主体に考えられていないシステムなのかなと思います。今の日本の公立の教育だと、そのシステムに合わない子が出てくるのはしょうがないこと。
大人でも、休みながら自分にご褒美しながらバランスをとっているのに、子どもだけずっと我慢し続けて「行きなさい」というのは可哀そうです。子ども、特に小学生は「学校に行く」一択しかなく、それはつらいなと感じます。高校まで行くと選択肢はすごくたくさんあるのになぁ。
私自身は、自分がわくわくすることを常になくさないようにしようと心がけています。楽しそうにしている大人が目の前にいないと、子どもだってこの先楽しく生きていけると思えないですよね。なので、あえて「○○をご褒美に仕事頑張ってくる!」「○○が楽しみだな~」など、口にするようにしています。
大人も、本やネットをみて「素敵だな」「こうなりたいな」という存在がいますよね。子どもにとって、先生や家族など身近な大人がロールモデルであれたらと思っています。
ちょっと感動したこと
昨日、兄が買ってきたチキンをAが欲しがったら、ほんとはあげたくないけど「いいよ」と譲ってくれました。
ちょうど先日、兄の落とし物が無事に返ってきたことと絡めて話をしていると、Aが「要するに、”優しさが旅をする”ってことでしょ?」と。
確かに!Branchのみなさんもそんな感じだな~。
その時には返せなくても、違う場面で別の人に優しくできていたら素敵だなぁと思います。
その他のインタビューはこちら。
【学年別】不登校のきっかけと対応、利用した支援やその後の変化 – 当事者・保護者インタビュー記事まとめ
発達障害や不登校の子の「友だちができる。安心できる居場所」とは?
Branchでも1つの解決策として、不登校・発達障害があるお子さま向けの「学校外で友だちができる」オンラインフリースクールを運営していて、以下のような特徴があります。
- 同じように「発達障害」や「不登校」で悩まれている保護者の方達がなんでも自由に悩みや困りごとを相談できる安心できるコミュニティや、家族以外の人との関わりが減ってしまった不登校のお子さま達が自分の「好きなこと」をきっかけに安心できる居場所や、友達ができるようなサービス。
- NHKや日テレなど多くのメディアにも紹介され、本田秀夫先生との対談や、厚生労働省のイベントの登壇実績もあり、サービス継続率は約95%以上。
- 小学校低学年のお子さまはもちろん、どんな子でも楽しく参加できるようにスタッフがお子さま一人ひとりに寄り添ったサポートを徹底。
Branchオンラインフリースクールは1ヶ月無料体験ができるので、ご利用を迷われている方は一度お気軽に無料面談予約をお申し込みください。