発達障害や不登校のお子さんと保護者が集い、部活動や悩み相談ができるBranchオンラインコミュニティでは、毎月さまざまなテーマで「保護者会」を開催しています。

この記事では、感覚過敏や感覚鈍麻など、子どもの「感覚の凸凹」をテーマに扱った、2021年2月の保護者会の様子をお届けします。

 

子どものことだけでなく、保護者自身のことも分かち合う

保護者会の冒頭では、お互いを知るための自己紹介タイムを設けています。

「うちの子はマインクラフトが大好きで、Branchのマイクラ部にも参加しています」などと、お子さんの興味関心のシェアだけでなく、保護者さん自身が日々感じていることも分かち合います。

「先日、ドラム体験に参加してきた。久しぶりに自分の時間が持てた」
「学校の先生が、『家庭で過ごす時間を楽しんでくださいね』と言ってくれて嬉しかった」

この会に参加された保護者さんから、そんなエピソードをお話いただきました。


五感+前庭覚・固有受容覚。発達を捉える「七つの感覚」って?

今回のテーマである「感覚の凸凹」について、まずはBranchスタッフの作業療法士・小堀からお話しました。


五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)という言葉は一般的に浸透していますが、発達を捉える際に重要な感覚がさらに2つあります。


・前庭覚(耳の奥の器官で揺れや回転を感じる)
・固有受容覚(筋肉の伸び縮みの刺激から、体の位置や動きを把握する)


どちらも、ボディイメージを構築することに深く関連しています。


感覚の凸凹は人それぞれ。特定の刺激を強く感じやすい「感覚過敏」だけでなく、刺激を感じにくい「感覚鈍麻」の特性がある人もいます。

「感覚過敏/鈍麻」といっても、すべての感覚が敏感/鈍麻であるとは限りません。ひとりの人でも、七つの感覚の中で過敏と鈍麻が混在していることも少なくありません。

また、脳の目覚めの状態やストレスによって、同じ刺激であっても感じ方に波が生じることがあります。

 

感覚凸凹の強い子どもたちの「あるある」エピソード

続いて、参加者同士でのお子さんの感覚凸凹「あるある話」の共有です。

・靴下を脱ぎたがる
・洋服のタグが苦手
・伸びない素材はダメ

 
といった、触覚にまつわるエピソードには「あるある~!笑」との声が多数。「心地いい素材を選ぶ、タグを取ってあげる」といった対策も共有されました。

・フォークなどの食器の音が苦手
・体育館での集会で、音の反響がしんどい様子
・救急車や選挙カーの音が耐えられない

といった、聴覚にまつわるエピソードも多く挙げられました。

特定の音が苦手というだけでなく、予測できないタイミングで大きな音が出ると苦痛だというお子さんもおられました。

先生と交渉して、苦手な音・予期せぬ音が生じにくいように教室環境を改善してもらえたという事例もありました。

他にも、においに敏感、特定の場に長くいられない、鉛筆を持つとムズムズする、朝は力が入らない……などなど多様なエピソードが共有されました。

手先の使いづらさについては、感覚の鈍感さからくる悩みや、目覚めの状態、運動の不器用さなどが影響している場合もありそうです。

感覚の凸凹は強みになることもある、というお話もありました。

聴覚過敏で、苦手な音もあるけれど、好きなことには能力を発揮できる!というお子さん。楽譜が読めなくても、一度聴いたフレーズを正確に覚えて歌うことができるそうです。「過敏」には、情報を捉える解像度が高いという側面もありそうですね。


 

これって感覚凸凹に関係あるの?保護者の悩みにスタッフがお答え



続いて、質問・相談タイム。「感覚の過敏・鈍麻と関係がありそうだけど、他の原因かも……これってどういうこと?」と、保護者がモヤモヤしていることをお話いただき、スタッフがお答えしました。


■車酔いって何で起こるの?

・乗り物に酔いやすい(電車は良いけどバスはダメ、自家用車のみNGなど様々)
・遊園地の絶叫系に乗れない


乗り物酔いとは、前庭覚が不規則な揺れなどの過度な刺激を受け、目から入る情報とのズレで脳が混乱している状態。においの不快感や精神的な不安なども影響するといわれています。
意外と、前庭覚が関わっているという認識は一般に浸透していないかもしれませんね。



ちなみにスタッフ宮脇は、前庭覚が鈍麻なので絶叫マシーン大好きで何回乗っても平気!
小堀は前庭覚過敏ぎみなので、トランポリン3回くらいでしんどくなります(笑)これも
個人差がありますね〜。




■猫舌は感覚過敏?

・熱いものが食べられない/飲めないって、口の中の感覚過敏なの?

もちろんその可能性もあると思いますが……感覚の凸凹だけが原因とは限りません。

熱い物を食べるのが平気な人は、食べ物を口に含むときに無意識に舌の動きを駆使して、食べ物をたくさん空気に触れさせることで冷ましながら食べています。猫舌気味のお子さんは、舌の運動機能の不器用さが影響している場合もあるかもしれませんね。


■氷をたくさん食べるのは、どうして?

・ある時期から毎日複数個、氷を食べるようになった
・噛むのではなく、ずっと舐めている
・暑い/寒いとかではなく「美味しい」と言っている
・本人はすこぶる元気。習慣になってしまっているけどこのままで大丈夫?


発達障害のあるお子さんは、体温調整が苦手な場合もあります。でも、冬にもずっと食べるのであればその要因では説明しづらいですね。ガリガリ噛む感覚を求めてるわけではなさそうだし……。
他の保護者さんから、「氷を食べるのは鉄分不足と聞いたことがある」との情報をいただきました。
体調に異常がなければ少し見守っても良いでしょうが、鉄分不足などの要因が隠れている可能性もあるので、かかりつけの病院に行く際に質問/相談してみるのもひとつの方法だと思います。



■感覚過敏+α(こだわり/強迫観念/不安/緊張)の要因で起こる困り事

・特定のお店のハンバーグしか食べない(見た目で判断)
・骨折して半年以上経っても引きずっている(記憶が鮮明に残ってしまう)
・ベタベタが嫌で頻繁に手洗いする
・外出のときのトイレが頻回になる


強迫的な行動や、不安・緊張の過度な高まりは、保護者がみていても「つらそう」「かわいそうだな」と感じるということでした。基本的にはその行動を強く指摘はせず、他のことに気持ちを向けられるように声掛けをしたり、可能な限りストレスを減らして安心できるような環境づくりを意識されているとのこと。


長期間続いたり、エスカレートするようなら、小児科や児童精神科への相談という選択肢もあるでしょう。



感覚凸凹による困り事が落ち着いていく過程

参加者の皆さんからは「苦手な感覚のはずなんだけど、好きなことなら平気なのよね」というお話もちらほら聞かれました。感覚の過敏・鈍感の特性が全くなくなることはないでしょうが、精神的な苦痛が和らいでいくことで、段々と克服に向かうこともあります。そのポイントをいくつかご紹介します。



①好きな感覚/欲しい感覚をしっかりと入れて気持ちを安定させる


②苦手な感覚刺激をなるべく減らす環境づくり
感覚過敏の方に”慣れ”は生じにくいといわれています。苦手な刺激に触れる機会を極力減らしていくといいでしょう。

③感覚以外の要因でストレスになる状況があれば改善する


④興味があるものを通じて、能動的に刺激にアクセスする
自分のタイミングで触る、音を鳴らすなど、「予測ができる状態」であれば、不安・緊張が生じにくいため、感覚過敏のストレスも和らぎやすいといわれています。

⑤しんどくなったときのストレス発散・クールダウンの方法を増やしていく
何かを噛む、トランポリンで飛び跳ねるなど、その子にとって心地よい刺激を得られる環境を用意できると、苦手な刺激でストレスが溜まったときの癇癪やパニックが起こりにくくなったり、クールダウンしやすくなったりします。

保護者会参加者のみなさんも、感覚を欲する行動やストレス発散に対しては、よほどの危険や害がない限りはなるべく見守るスタンスを取っていました。


感覚は、脳の栄養。気持ちの安定や集中の調整にも役立ちます。ボディイメージが曖昧なお子さんにとっては、自分の体を確認している行動の場合もあります。
健康に悪影響がありそうな場合や、社会的に受け入れられないような行動は、似た感覚刺激を得られる代わりの手段を考えていけたら良いですね。センサリーグッズ等、いろんな商品も出ています。


 


学校の先生と子どもの特性を共有する「サポートブック」について


感覚の凸凹を含む、子どもの特性や、困り事と対処法について、学校の先生などとあらかじめ共有しておくと、必要なサポートを受けやすくなります。

そんなときに便利なのが「サポートブック」です。

インターネットでも無料ダウンロード出来るテンプレートが出ています。
テンプレートの例: LITALICOジュニア サポートブック(外部サイト)

・合理的配慮を求めるときに、口頭のみよりも書面があった方が伝わりやすい
・配慮が必要な特性の部分だけでも書いた方が良い
・記録することで保護者自身の理解が深まる
・「しんどいよね」って分かってもらえる味方がいるだけで、子どもはほっとすると思う

保護者会では、実際にサポートブックを作ったことのある方たちの体験談もシェアされました。

書面にすることで、学校であれば通常学級の先生・支援学級の先生・学年主任・コーディネーターなど複数の先生に対して同じように伝えられる利点もあります。学年が上がる際の引継ぎに時間がかかることもあるようですが、書面であればそのまま次の担任へ渡してもらうことができますね。


どんな悩みも気軽に相談を

Branch保護者会後のアンケートでは、「あるある話を共有できてよかった!」「自分だけじゃないという安心感が持てた」「心強い」という感想を複数いただきました。
保護者会の醍醐味ですね。

また、テーマを絞って話し合ったことでの新鮮さや、勉強になったというご意見もありました。


今後も、アンケート内容やコミュニティでの話題などから皆さんが話したい・聞きたいテーマを選んでいきたいと思います。ご希望があればぜひお知らせください!

もちろん、テーマはあくまで交流のきっかけですので、いろんな質問・お悩みもお気軽にお話しくださいね。
ゆったりと雑談できるような場も設けるなど、いろいろ試していければと思います。


この記事を読んで、Branchオンラインコミュニティに興味を持たれた方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。


 

 

ライター:小堀 紫苑

京都大学医学部人間健康科学科卒、資格:作業療法士 保育士
精神科病院、療育、訪問看護での勤務歴あり。経験を活かして、柔軟に創造的に、お子さんと関わっていきます。私自身とてもマイペースな子どもだったのですが、納得いくまで取り組むことを尊重し見守ってくれた大人の存在は、今でも心の支えです。 私もお子さんの可能性を信じ、個性に寄り添い、安心できるお話し相手になれたらと思います。そしてご家族のサポートも行っていきたいです。好きなことは、歌・ウクレレ・手芸・ヨガなど。ジブリや絵本の世界観、生き物や自然を観察することも大好きです!