
こんにちは。不登校や発達障害のお子さんと保護者さんのための居場所、Branch(ブランチ)です。
お子さんが学校に行けなくなったとき、保護者様は「この先どうなってしまうのだろうか」「自分の関わり方が悪かったのではないか」と、大きな不安や自己否定感に襲われ、孤立感を抱えやすい状況にあります。
誰にも話せず、一人で全てを抱え込んでいる方もいらっしゃるかもしれません。
今回は、小学4年生の秋から不登校となり、自閉スペクトラム症(ASD)の特性を持つFさん(仮名)と、お母様のOさん(仮名)へのインタビュー、そしてその後の「Branch卒業」に関するメッセージを元に、不登校から居場所を見つけ、自立に向けて次のステップへ進むまでの道のりをご紹介します。Oさんがどのようにご自身の孤独を乗り越え、親子の関わり方を改善していったのか、具体的な対応策と、Branch(ブランチ)での活動を経て得られたポジティブな変化について詳しくお届けします。
I. 突然の不登校。きっかけは「勉強の遅れ」と「騒がしいクラス」
インタビュー時(中学1年生の10月)、Fさんは13歳の中学1年生です。
性格は「すごく大人しい子」で、普段は家で絵を描くのが日課となっています。
口数も少ないそうです。
不登校になったのは、小学4年生の9月の半ばでした。
ある日突然、「学校に行きたくない」と泣きながら訴え、その日を境に行かなくなりました。お母様のOさんとご主人は、自己主張をあまりしないFさんが泣いて行きたくないという状況から「相当嫌なんだ」と察し、無理に行かせず、一旦休ませることをすぐに決めました。夫婦間で無理に登校させる必要はないという意見が一致していたため、休ませる方針で揉めることはありませんでした。
不登校の理由として、Fさん本人の口から出てきたのは「勉強についていけない」という言葉でした。また、当時の学年はコロナ禍で学校の様子が分かりにくい状況でしたが、女の子同士のトラブルや、クラスが荒れていて騒がしい雰囲気だったことも影響していたようです。Oさんが教頭先生からクラスが荒れている状況を聞いたこともありました。
不登校初期には、登校しようとすると腹痛を訴えるなど、身体に拒否反応が出ていました。放課後だけ行こうとした時期もありましたが、やはりお腹が痛くなったため、身体が拒否していると判断し、休ませることにしました。腹痛自体は12月頃まであったようです。
II. 自閉スペクトラム症(ASD)の診断と特性の理解
Fさんは不登校になった後、自閉スペクトラム症(ASD)だと診断されています。
不登校初期、小4の11月頃には、まず起立性調節障害の疑いから病院で検査を受けていましたが、特に症状が当てはまることはありませんでした。その後、不登校のピアサポートグループで発達障害に関する話を聞くうち、Oさんは「うちの子もそうなのかもしれない」と思うようになりました。Fさん本人も「どういう困りごとがあるのか知りたい」という気持ちがあり、不登校になって約1年後の小学5年生の1月頃に検査を受け、自閉スペクトラム症と診断されました。
医師からの説明では、Fさんは目で見ることは得意だけれど、耳で聞くことは頭に残りづらく、情報を処理する速度がゆっくりだという特性が伝えられました。学校では、先生が話すことや他の人の話すことを処理しきれないまま、次の話に進んでしまうという状況が多くなっていた可能性があり、これが本人が「勉強についていけない」と感じていた理由の一つだったと考えられています。
Oさんは、この特性が、不登校のきっかけとなった「荒れたクラス」の状況把握の難しさや、騒がしい音への敏感さとも関わっており、「いろいろな苦手なことが重なる」学校環境が、不登校の原因となっていたのではないかと振り返っています。
III. 長引く不登校と親子の孤独。変化のきっかけとなったピアサポートと関わり方の工夫
不登校開始後の小学4年生12月頃から、Fさんは精神的に大きく落ち込みました。この時期から約4〜5ヶ月間、引きこもりの状態となり、「外に一歩も出たくない」という気持ちから、家のダイニングテーブルの下にクッションを持っていき、ずっとそこで過ごすという状態でした。
お母様のOさんは、この時期に「子供との関わり方をどうしたらいいか」を学ぶため、不登校のピアサポートグループを探して関わり始めました。
ピアサポートでは、親が子どもの話を聞く傾聴の姿勢や、会話記録を取ってカウンセラーにアドバイスをもらう方法を学びました。このサポートは、学校に戻すことを目的とするのではなく、「不登校と発達障害は密接に絡まっている」という認識のもと、家庭で子どものコミュニケーション能力の基盤をサポートすることに重きを置いていました。Oさんも、いずれ社会に出て一人立ちするための基盤を家庭で作る必要があると考え、熱心に取り組みました。
その結果、Oさんは「とにかく受け入れる」ことを最初に頑張り、子供への関わり方を少しずつ変えていきました。
この親の関わりの変化や、学校の担任の先生にお願いしてクラスの友達との手紙のやり取りを始めたことが相まって、Fさんは少しずつ元気を取り戻していきました。
IV. 好きなこと(絵とゲーム)を通じたエネルギー回復と居場所の獲得
Fさんの得意なこと、好きなことは「絵を描くこと」と「ゲーム」です。絵を描くことは日課であり、タブレットやパソコンを使って描いています。将来はイラストの仕事をしたいという夢も持っています。絵を描くのは「上手になりたい」という気持ちが強く、家族にも完成したものを見せてくれないことが多いそうです。好きなゲームはマイクラや東方プロジェクトのキャラクターです。
小学5年生の12月頃、エネルギーが溜まってきたと感じたFさんから、大きな変化の言葉が出ました。それは、「一緒にゲームで遊ぶ友達が欲しい」というものでした。学校の女の子たちとは、自分の好きなことの話が噛み合わないと感じていたため、これは彼女にとって苦しい部分だったと考えられます。
この要望をきっかけに、Branch(ブランチ)へ入会しました。Branch(ブランチ)では、趣味が合う仲間や、イラストを描くのが好きな子がたくさんいたため、一緒にゲームをしたり、イラストについて話したりするようになりました。Oさんは、Fさんが「自分だけじゃない」と分かり、気持ちが楽になったように見受けられたと話しています。
Oさんも、ピアサポートで教わった「子どもが興味あることを親も一緒に興味を持ってやってみる」を実行しました。苦手なゲームも一緒にやってみたところ、「こんなに難しいことをやっているのか」と驚き、子どもの能力を逆にすごいと感じるきっかけになりました。
V. 継続的な支援と中学への接続
現在(中1)のFさんは、学校に行かないことに対し、以前のような後ろめたさを感じることも減り、自分で決めて日々を過ごせていると感じられています。
中学校への進学にあたっては、小学6年生の12月〜年明け頃に、小・中学校の関係者(校長、教頭、養護の先生など)と、相談支援員を交えて引き継ぎの場を設け、Fさんの現状を共有しました。Oさんは、中学校の体制が、小学校(担任が一人で担当する仕組み)とは異なり、学年団で子どもに関わる仕組みであるため、小学校時代より円滑なコミュニケーションが取れていると感じています。
ご家庭では、Branch(ブランチ)での活動のほか、複数の機関と連携して継続的な支援を行っています。
- 病院: 診断を受けた担当医の先生と月1回の診察・面談を続けています。
- 相談支援員: 利用しています。
- 学習支援: 小学6年生の夏頃から「勉強を頑張りたい」という声を受け、不登校支援を行うNPO法人のオンライン学習支援を週1回利用しています。
VI. 3年間の利用を経て、高校進学を見据えたBranch(ブランチ)卒業へ
FさんとOさんは、約3年間のBranch(ブランチ)の利用を経て、次のステップに進むために「卒業」という選択をされました。
Oさんは、Branch(ブランチ)を利用したことで、家族以外の安心できる大人との接点、日常的に遊べる友だちづくり、好き/得意なことを深めること、そして保護者として不登校や発達障害についての悩み相談や情報収集といった目的を達成できたと感じています。
Oさんは、「しんどい時に、ブランチでたくさん助けられて、本当にありがたかった」「ここと出会えなかったら乗り越えられなかったと思います」と感謝の言葉を述べています。
卒業を決めた主な理由(次のステップへの移行)
- 親子の状態の安定: Oさん自身も子どもたちもずいぶんと安定してきたため。Oさんは、色々と不安になることが少なくなり、学校の先生にも相談しやすくなり、安定した日々が過ごせている。Fさんの状態や環境が好転し、利用機会が減った。
- 本人の進路への意欲: Fさんが高校進学を真剣に考え始め、環境に変化が出てきたため。本人が「もっと勉強する環境を整えたい」という希望を持ったため、そちらにシフトするタイミングが来た。
- 学校との良好な連携: 中学の担任が不登校に理解のある先生で、週1で自宅に来てゲームやアニメの話ができるマニアックな先生であるため、相談しやすい環境が整った。
- Branch(ブランチ)内での成果: 妹も「おひろめば」に絵を投稿し、コメントをもらって嬉しそうにするなど、遊びに参加することは少なくても、仲間との繋がりを得られていた。
Fさんは、高校進学という目標を定め、担任の先生とも相談しながら次のステップに進むことを決意しました。
まとめ
自閉スペクトラム症(ASD)の特性を持つFさんは、小学4年生で不登校になった際、情報処理速度の苦手さや集団生活の騒がしさに課題を抱えていました。
お母様のOさんは、子どもの引きこもりを経験する中で、ピアサポートを通じて傾聴や受け入れの姿勢を学び、親子関係を安定させました。Fさんがエネルギーを回復し「好きなことの仲間が欲しい」と望んだとき、Branch(ブランチ)という、絵やゲームの趣味が合う仲間と繋がれる居場所を見つけました。
約3年間のBranch(ブランチ)の利用を経て、Fさんは高校進学という次の目標を見つけ、Oさんも不安が軽減し安定したため、Branch(ブランチ)を「卒業」されました。
保護者様へお伝えしたいのは、親が孤立せず、子どもの特性を受け入れ関わり方を工夫すること、そして子どもが好きなことを通じて自信や仲間を見つけられる居場所が、次のステップに進むための大きなエネルギーになるということです。
※この記事は、以前インタビューした下記Podcastと、卒業時に頂いたメッセージやアンケートを元に記事化しております。
発達障害や不登校の子の「友だちができる。安心できる居場所」とは?
Branchでも1つの解決策として、不登校・発達障害があるお子さま向けの「学校外で友だちができる」Branchコミュニティを運営していて、以下のような特徴があります。
- 同じように「学校行きたくない」という気持ちを抱え、家族以外の人との関わりが減ってしまった不登校のお子さま達が自分の「好きなこと」をきっかけに安心できる居場所や、友達ができるようなサービス。
- NHKや日テレなど多くのメディアにも紹介され、本田秀夫先生との対談や、厚生労働省のイベントの登壇実績もあり、サービス継続率は約95%以上。
- 小学校低学年のお子さまはもちろん、どんな子でも楽しく参加できるようにスタッフがお子さま一人ひとりに寄り添ったサポートを徹底。
Branchコミュニティは1ヶ月無料体験ができるので、ご利用を迷われている方は一度お気軽に無料面談予約をお申し込みください。








