
こんにちは。不登校や発達障害のお子さんと保護者さんのための居場所、Branch(ブランチ)です。
「本当は人と遊びたいのに、外に出るのが怖い」。そんなお子さんを前に、どう声をかければいいのか分からなくなった経験はありませんか。
今回ご紹介するのは、中学2年生のソウタくん(仮名)とお母さんの歩みです。夏休み明けから学校に行けなくなり、人と関わる機会がほとんどなくなっていたソウタくん。そんな彼の世界を少しずつ広げていったのは、大好きなポケモンカード(ポケカ)でした。知らない人とも対戦できるようになるまでの約1年を、お母さんが大切にしてきたことと一緒にお届けします。
この記事の要点
- 中学2年生のソウタくん(仮名)は、ある年の夏休み明けから学校に行けなくなり、人と関わる機会がほとんどない日々を送っていた
- 好きなポケモンカードを入り口に、土曜日はNPOで大人と遊び、平日はBranchのメンターさんと過ごす時間ができた。お母さんは「プログラムのときは安心して仕事に行ける」ようになった(2025年夏〜)
- 中学2年生の春には、ポケモンカードのジムバトルで知らない人と抵抗なく対戦し、はきはきした声で話せるようになった。予定も自分で調べて「行こう」と言うようになった
- 平日にも通える場所が増え、お母さんは「自分の場所ができているのかな」と感じている
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| お子さん | 中学2年生・男の子(仮名:ソウタくん) |
| 特性 | 診断なし(受診はしている) |
| 不登校の時期 | ある年の夏休み明けから。中学1年生の時点で登校していない |
| 困っていたこと | 人と関わる機会がないこと/日中ひとりで過ごす時間の不安 |
| 利用したサービス | Branch home+(メンターとマンツーマンの好きなことプログラム)・2025年9月〜 |
「人と遊びたい」気持ちはあるのに、外に出るのが怖くなっていた
それまで無欠席で学校に通っていたソウタくん。ある年の夏休み明けから、ぴたりと学校に行けなくなりました。そこからしばらくは、家から出られない時期が続きます。
もともと、人は好きな子です。友だちと話したり、遊んだりしたい気持ちもある。学校に行けなくなってからも、「遊びたい」と口にしていました。けれどコロナの時期に友だちと過ごす機会が減り、学校でも少し孤立していたようだと、お母さんは振り返ります。
家にいる時間が長くなるほど、「自分を見られたくない」「知らない人に変な人だと思われそうでいやだ」という気持ちがふくらんでいきました。それでも、「遊びたい」という気持ちは消えていませんでした。この気持ちこそが、のちに外の世界へつながる糸口になっていきます。
仕事で日中家を空けるあいだ、ひとりで過ごす子どもの不安をどうした?
ソウタくんの場合は、「好きなこと」を入り口に、誰かと過ごせる時間を少しずつ増やしていきました。
お母さんが仕事で家にいない日中、ソウタくんはひとりで過ごします。夜になると不安になりやすく、ゲーム以外の時間の過ごし方が分からずに「暇だ」と感じることも多かったといいます。子どもの不安を、どう取り除いてあげればいいのか。それは、お母さんがずっと考えてきたことでした。
最初の扉が開いたのは、2025年の夏ごろです。ソウタくんは、若者を支援するNPOの集まりに、毎週土曜日に通い始めました。そこには、ポケカで一緒に遊んでくれる大人がいました。家で一生懸命デッキを組み、土曜日にそのデッキを大人に見てもらってアドバイスをもらう。それが、ソウタくんの大きな楽しみになっていきます。
好きなことがあれば、人のいる場所にも足が向く。土曜日の姿は、そのことを教えてくれていたのかもしれません。お母さんは「平日の日中にも、誰かと交流できる時間があれば」と考え、Branchに申し込みました。そのときに書いた願いは、「好きな事を通して人と繋がりたい」。
9月からは、Branchのメンターさんとマンツーマンで過ごす「好きなことプログラム」が始まりました。自分から話すのは苦手なソウタくんですが、メンターさんとは楽しく話せている様子。お母さんが仕事から帰ると、「今日は〇〇して遊んだよ!」「楽しかった!」と、その日のことを教えてくれるようになりました。
「プログラムのときは安心して仕事にいけるようになった」
気持ちが沈んだ時期も、お父さんとのポケカが支えに
12月、ソウタくんはポケカの大会に参加しました。いろいろな計画を立てて、とても楽しみにしていた大会です。大会のあとの1か月ほどは気持ちが落ち、外に出にくく、朝も起きられない日が続きました。
それでも、家の中には楽しい時間がありました。夜に帰宅したお父さんと、ポケカで遊ぶこと。それがいつしか毎日の習慣になり、その時間はとても楽しく過ごせていたそうです。
調子が落ちたときにも、好きなことを一緒に楽しめる相手が家族の中にいる。それは心強い支えだったはずです。体調も、「〜しなきゃいけない」と思っていたころに比べると、よくなってきているとお母さんは話します。そして春、ソウタくんは大きな一歩を踏み出します。
不登校で外に出られない中学生が、知らない人と関われるようになったきっかけは?
ソウタくんの場合は、ポケカのジムバトルでした。
中学2年生の春、お母さんはその変化をこう語ります。
「ポケカに出会ってから、だいぶその楽しみが大きくなっていて。人と関わったりするのがちょっと苦手なんですけど、ジムバトルに行くってなると、知らない人とやるのは今は結構抵抗なくやれてるみたいで」
いちばん変わったのは、声です。以前はとても小さかった声が、人と話すときにもはきはきと出るようになりました。ジムバトルの予定も自分で調べて、「行こう」と言うようになっています。
誰かに誘われるのではなく、自分で調べて、自分から「行こう」と言う。このことこそ、大きな一歩でした。強いカードで勝つより、自分でデッキを考えて組むのが好きだというソウタくん。好きなことに打ち込む時間が、そのまま外へ出ていく力になっていたのだと思います。
変化は、家族への接し方にも表れていました。お父さんの単身赴任の準備を家族でしていたとき、以前なら自分の好きな予定でないと嫌な気分になりがちだったソウタくんが、準備に協力し、家族をいたわる言葉をかけてくれたのです。思っていても口にしなかったことを、言葉にできるようになっていました。
平日にも「自分の場所」ができてきた
出かけられるかどうかは、今も日によって違います。それでも、出かけたくなる場所は確実に増えてきました。
土曜日に通っていたNPOの集まりが、2026年4月から平日の夕方にも開かれるようになり、ソウタくんは「平日も行きたい」と希望しています。そこでは支援の方や通っている方など、いろいろな人と遊べているそうです。
好きなことを軸に、ソウタくんの周りには「行ける場所」「会える人」が少しずつ重なってきました。
「自分の場所ができているのかなって、最近思っています」
以前は学校を気にする様子もありましたが、今は行けていないことで苦しんでいるようには見えない、とお母さんは話します。学校の外にも、自分の場所がちゃんとある。そう思える毎日が、今のソウタくんを支えています。
いま、「やってみたい」がふくらんでいる
ポケカのほかにも、ソウタくんには「やってみたい」がたくさんあります。好きなポケモンやポケカのことを、動画にしてアップしてみたい。音楽を聴くのが好きなので、パソコンで曲作りもしてみたい。スマブラのイベントがあったら出てみようか、とも考えているそうです。
家から出られなかったころを思えば、「やってみたい」が次々に出てくること自体が、大きな変化です。好きなことが、次の好きなことを連れてくる。ソウタくんの世界は、これからも広がっていきそうです。
お母さんが大切にしてきたこと
学校とのやりとりを、無理のない形にしてきた
中学1年生の1学期は、学校から「登校できるように」と言われ、学校とソウタくんのあいだで板挟みになってつらい時期がありました。2学期からは、やりとりを週1回、プリントを届けてもらう形にし、家庭訪問にも来てもらっています。今では先生も「やりたいことができているならいいですね」と言ってくれるようになりました。
「しなきゃ」より、楽しみな予定を大切に
お風呂に入りたがらず、「入らなきゃいけないのに入れない」とパニックになってしまうことがありました。親が「入らなくてもいいんじゃない?」と伝えても、そうなってしまう。けれど、次の日に楽しみな用事があると、自然とお風呂に入れて、早く寝ることもできたそうです。
ひとりで踏み出せない日は、一緒に行ってみた
平日にも開くようになったNPOの集まり。お母さんが仕事でいない日は、「今日は行く」と決めていても、ひとりでは踏み出せないことがありました。そこでお母さんの休みの日に「一緒に行こうか」と誘ってみたところ、平日にも行くことができました。隣で一緒に踏み出した一歩が、平日の居場所につながりました。
行きたい気持ちを大事に、好きな場所へ
本人が行きたいときは、ジムバトルへ。ルールのある対戦の中でなら、知らない人とも言葉を交わせるようになりました。ポケカ好き同士で知り合いができたら。お母さんは、そんな未来を楽しみにしています。
好きなことで「元気をためる」のを見守る
「少し出られるようになれば、自信がついて出られるようになる」という話を聞くこともあります。迷いがなかったわけではありません。それでも家族としては、「自分の好きなことをやって、ちょっと元気をためられていたらいいのかな」と考えて、見守ってきました。その「元気」が、ジムバトルへ向かう一歩になっています。
まとめ
人と遊びたい気持ちはあるのに、外に出るのが怖くなっていたソウタくん。好きなポケカを入り口に、土曜日には大人と遊べる場所が、平日にはメンターさんと過ごす時間ができました。
そして今、ソウタくんはジムバトルで知らない人と対戦し、はきはきとした声で話し、自分から「行こう」と言えるようになっています。平日にも通える場所ができ、お母さんは「自分の場所ができているのかな」と感じています。
その歩みのそばには、「しなきゃ」より楽しみな予定を大切にし、好きなことで元気をためるのを見守ってきたお母さんの姿がありました。
好きなことは、ときに外の世界への入り口になります。お子さんが夢中になっているものの先に、次の扉があるかもしれません。このお話が、同じように悩む保護者さんのひとつの手がかりになればうれしいです。
この記事について
2025年7月の申込時の記録と、2025年8月〜2026年4月に行った保護者面談4回の記録をもとに、Branchのスタッフが構成しました。
お名前は仮名です。
最終更新:2026-09-25




