発達障がいとは、脳の発達が定型と異なるため、日常的な社会生活に何らかの支障を持つ状態を指します。

幼児の頃から症状が現れ、小学生・中学生のうちに気づかれることが多いですが、昨今では、大人になって仕事をしてからわかるケースも多く、年齢を問わずお悩みの方が多い症状です。

 

発達障がいは、生まれつきの脳の発達の違いによるもので、ある時期から発症するといった類のものではありません。所属するコミュニティによって、生きづらさの度合いが変わり、自覚するタイミングとなることがほとんどです。

 

発達障がいの定義については、年々更新されています。

 

主に、以下の2つの分類マニュアルをもとに精神医学会が定義します。

 

発達障害の分類マニュアル

「DSM」

アメリカ精神医学会(American Psychiatric Association APA)の発行するDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders「精神障害のための診断と統計のマニュアル」。

 

「ICD」

世界保健機関(WHO)の診断基準、(International Classification of Diseases「国際疾病分類」。

 

発達障がい者支援法

2005年に施行され、2016年に改正された「発達障がい者支援法」という法律があります。ここでは、発達障がいは以下のように定義されています。

「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障がい、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」

http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/190/pdf/s051900361900.pdf

 

ここにも指定されているように、発達障がいにはいくつかのタイプの症状があります。

発達障がいに含まれるいくつかの症状についてご解説します。

発達障がい解説図イラスト

 

 

自閉症スペクトラム

 

自閉症スペクトラムとは?

アメリカ精神医学会が2013年発行した「DSM-5」で、自閉症(Autism)、自閉性障害(Autistic Disorder)、アスペルガー症候群(Asperger Syndrome)という名称は廃止され、自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害という診断名に統合されました。

スペクトラム(Spectrum)とは、英語で「連続体・分布範囲」を指します。

自閉症に連なる、自閉症の分布範囲という意味になります。

ここでは、自閉症スペクトラムに統一します。

 

かつて別の診断名であった症状

 

自閉性障害、自閉症とは?

世界保健機関(WHO)の診断基準、「ICD-10」(International Classification of Diseases「国際疾病分類」第10版)において、広汎性発達障がいというカテゴリーの中で、自閉症が定義されています。

社会性の欠如や、他者とのコミュニケーションにや困難が生じたり、こだわりが強いという特徴があります。

 

アスペルガー症候群とは?

特定の分野への強いこだわりがあり、軽度な運動機能の障害が見られたりすることもあります。古典的自閉症に見られるような知的障害および言語障害はありません。

他人の情緒を理解したり、言葉やジェスチャーの裏の意味を理解することが苦手であるため、社会的コミュニケーションが困難となります。

以上2つが統合され、自閉症スペクトラムとなりました。

 

自閉症スペクトラムの特徴

自閉症スペクトラムには、主に以下のような特徴があります。

 

  • 特に同年代の他社との交流が困難である
  • 言葉の発達に遅れや障害がある
  • 興味の範囲が限られており、特定の物に強いこだわりがある

 

多くの場合、幼年期に保護者によって発見されますが、症状の種類や程度、また所属する集団によっても顕在化するかどうかは十人十色です。

 

幼児期

人への関心が薄く、人よりも何かしらの物への関心が強いのが典型です。

そのため、幼稚園・保育園で周囲の幼児が社会性を学び成長してゆく中で、孤立しがちです。

 

 

学童期

相手の感情や状況を慮って、適切な言動を取ることができないため、友人や周囲と、順当な関係を築くのが困難なのが特徴です。

 

 

大人

基本的な特徴は子供の頃と変わりません。

そのため、職場などで孤立しがちではあります。

しかし、知能の発達、知識を得ることで、自らの特徴を理解した上で、問題を避けるノウハウを身につけることができれば、より良い生活を選択することができます。

 

 

自閉症スペクトラムの原因

自閉症スペクトラムの原因は、現在まだ特定されてはいません。

先天性の脳機能障害という説が有力で、後天的な躾などが直接の原因ではないとされています。

 

 

 

自閉症スペクトラムの診断基準、検査方法

自閉症スペクトラムの診断基準、検査方法にはいくつかあります。

以下に主な検査方法と、その診断基準についてご解説します。

自閉症スペクトラムに限らず、他の発達障がいの診断にも関わるものもあります。

 

イリノイ式言語学習能力検査(Illinois Test of Psycholinguistic Abilities)

第1回ケネディー賞受賞者、カーク博士らが作成した検査法の日本版です。

以下の項目で、情報を受け取って、それを解釈し、他社に伝えるというコミュニケーションの機能を測定します。

 

言葉

  • 言葉の理解
  • 言葉の類推
  • 言葉の表現
  • 文の構成

 

  • 絵の理解

  • 絵さがし

  • 絵の類推

 

その他

  • 動作の表現

  • 数の記憶
  • 形の記憶

 

対象年齢は3歳~9歳と、小児期にフォーカスした検査法です。

発達障がいという全体的な是非を測定するのではなく、個人内での特性の差を測定できるので、多面的な個性を知ることができます。

 

 

ブラゼルトン新生児行動評価(Neonatal Behavioral Assessment Scale、NBAS)

1973年に、現ハーバード大学名誉教授であるT Berry Brazelton博士が作成した、新生児を対象とした「行動」の評価法です。

 

新生児の発達を、以下の4つの行動系で評価します。

・自律神経系、呼吸・循環器系、内臓器系など生理機能の恒常性

・運動系

姿勢や自発運動、原始反射の活動性など運動調整能力

・状態系

睡眠―覚醒リズムや意識状態の調整能力

・注意/相互作用系

視聴覚刺激に対しての反応や、覚醒状態を調整し外界と関わる能力

 

これらの項目から

  • 活動性
  • 周期性
  • 順応性
  • 反応の強さ

などの評価を行います。

新生児の社会的能力、行動の検査となります。

 

 

語彙発達検査(PVT、PVT-R)

 

言語理解力の中で、「語彙の理解力」の発達度を評価する方法です。

絵画を用いた語彙発達検査(PVT-R)が主流となっています。

 

4つの絵から、検査社が発した単語に最もふさわしい絵を選ばせるシンプルな手法で、また15分程度で完了するという手軽な方法です。

 

いくつかの検査法を試す中で、最もハードルが低いと言えるので、他の検査法に先立って試してみるのにはふさわしいでしょう。

 

対象年齢も、3歳~12歳と幼稚園児、保育園児から小学生まで幅広く対応しています。

 

 

注意欠陥多動性障害(ADHD)

 

発達障がいの中で、自閉症スペクトラムの次に挙げられるのが注意欠陥/多動性障害です。ADHDという略称でご存知の方も多いかと思います。

ADHDとは Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder の頭文字です。

 

ここではADHDに統一します。

 

ADHDの症状とは

 

ADHDの症状は、主に以下の3つに分けられます。

これらの特徴によって、周囲と軋轢が生じ、生き辛くなってしまうことで、さらに社会性が欠如してしまうという悪循環が生じてしまいかねません。

まずは、正確に症状を認識することが大切です。

 

 

不注意

日常において必要な注意力が欠如しているため、様々な問題が起こります。

 

  • 集中力が持続しない、気が散りやすい。一方で特定の事柄には過集中する。
  • 忘れっぽく、大切な持ち物や約束などを反故にしてしまう。
  • やりかけの作業を放置してしまう。
  • 掃除や整理整頓が苦手である。

 

 

 

多動性

じっとしていることが苦手で落ち着きがなく、以下のような特徴があります。

 

  • 貧乏ゆすりや、常に指を動かしたりと、体のどこかが動いてしまう。
  • じっと座っていることができず、落ち着きが無い。
  • 相手が聴いているかに関わらず、過剰にしゃべり続ける。

 

衝動性

考える前に突発的な行動をしてしまう症状です。以下のような特徴となって現れます。

 

  • 行列などの順番をじっと待っていることができない。
  • 気に入らないことに対して乱暴になる。
  • 会話の流れに関わらず、思いついたことを発言する。

 

ADHDの原因

ADHDに限らず、発達障がい全般に言えることですが、はっきりとした原因はまだわかっていません。

 

ドーパミンや、ノルアドレナリンなどの脳の神経伝達物質、が不足していることが原因というのが有力な説です。遺伝的、環境的要因の影響も指摘されています。

 

躾の方法が間違っているといったことが原因ではないので、親御さんとしては、焦らずにまずは症状を自覚することが大切です。

 

 

ADHDの検査方法

ADHDの検査方法は、以下の通りです。

  • チェックシートなどで現在の症状の確認
  • 問診により過去の状況を確認
  • 家族等への質問により症状の程度を調査
  • 身体的疾患等がないか脳波検査、頭部MRI/CTや血液検査
  • 共存疾患、二次疾患がないか調査

 

脳の発達が原因の発達障がいなので、脳のCTスキャンを撮ることを想像する方も多いですが、それはあくまで問診等によりADHDが確定的になった場合の、てんかんなど身体的疾患の有無を検査する場合です。

多くの場合、それ以前の段階でADHDが診断されることになります。

 

 

 

ADHDの治療方法

ADHDの治療は、脳の状態を完治することを目的とするのではなく、症状をコントロールして、よりよい社会生活を送ることを目的とします。

 

日常生活に支障がなくなれば、それは障害ではなくなります。

 

少しずつ環境を変えることから始め、ひとつひとつの改善を積み重ねることで状況は緩和してゆくはずです。焦らずに、階段を登ってゆきましょう。

 

 

環境やトレーニング

ADHDは、様々な刺激によって集中が途切れてしまいがちです。

部屋から余計な刺激を与える要素を減らし、目的に集中できる環境を作りましょう。

 

また、ペアレント・トレーニングという、対象者の親や周囲の人が受け理解を深めるトレーニングや、ソーシャルスキル・トレーニングという自身で障害をコントロールするトレーニングがあります。

 

投薬治療を行う前に、これらの方法を試すのが一般的です。

 

 

投薬治療

投薬によるADHDの治療は、あくまで二次障害を予防し、改善へのモチベーションを維持するためのものです。直接的に脳機能を治療するものではありません。

 

ADHD治療薬として認められているのは以下の通りです。

 

・注意欠陥/多動性障害治療剤

選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害剤

選択的α2Aアドレナリン受容体作動薬

 

・中枢神経刺激剤

 

以上のことを踏まえ、すぐに病院で薬の処方を求めるのではなく、理解を深め、日々の進歩を長い目で観察し続けることが、ご本人にも家族にも必要なことです。

 

ここまでは、発達障がいの主な分類、自閉症スペクトラムとADHDについて解説しました。発達障がいについて正しい知識を持ち、焦らず日々の改善をしてゆくことが大切です。