こんにちは。

「『好き』で自信を創り、『好き』で社会とつながる」をビジョンに、発達障がい児や不登校のお子さん向けにメンターマッチングサービスと教室運営をしている「Branch」の中里です。
https://branchkids.jp/


今回は不登校のお子さんがいる保護者の方が抱える問題について、あまり認知されていないことの一部を書こうと思います。

先日に母子分離に関する下記のツイートをしたら、共感のコメントをいくつかいただきました。

https://twitter.com/wato/status/1321330404092096512

 

共感くださったのは、同じような困りごとを経験しているという当事者の方たち。
コメントくださったのはごく一部の方(つまり似たような境遇の方はもっとたくさんいらっしゃる)なのだろうと思うと同時に、この大変さは子育て世帯以外に話してもなかなか伝わりづらいのだろうなとも感じています。

そこで、母子分離不安が強いお子さんがいる保護者は、どのように大変なのかを、書いていこうかなと思います。

 

子どもへの愛と母親という義務感によって我慢し過ぎてしまう

いつも書いていることになりますが、Branchに来るお子さんの約8割は不登校です。そのため、僕が日常的に接する保護者の方の多くは、不登校のお子さんがいらっしゃいます。更に、ほとんどのお子さんは発達障がいがあり、何かしらのこだわりが強かったり多動傾向が強かったりといった特性を持っています。


不登校、発達障がい、更に同居親族が平日の昼間はいない(お父さんは外で仕事)となると、お子さんの遊び相手はお母さんしかいないんですね。

中には1人で遊ぶことが得意なお子さんもいますが、僕の経験上では小さなお子さんであるほどお母さんと一緒に遊ぶことを求めます。

そうなると、お母さんの起きている時間のすべてがお子さんのやりたいことに振り回されることになります。

更にお子さんによっては、

①特性によって母親への執着が強い
②多動傾向があり、子どものやりたいことが分単位で変わり、ついていくのが大変
③気持ちが不安定で、夜中々寝ることができない

などの困りごとが追加されることもあります。
とにかく24時間、お子さんに振り回され続けます。


「振り回される」とあえて書いたのは、もう一つ大きな問題があるためです。実はこの問題、「他者に相談しづらい」のです。

この記事を読まれる方の中には「子どもと遊ぶのなんて当たり前のことだろ」「お母さんが子どもと遊ぶの疲れるなんて言ったら育児放棄だろ」と思う方もいるかもしれません。もしそうでなくても、少なくともお母さんたちは「そう思われるんじゃないか?」と考えてしまい、他者に相談しづらい心理状態になっています。

子どものことを愛しているぶん、「疲れたなんて言っちゃだめだ、思っちゃだめだ」と強く考え、一番近くにいる親族にさえ相談しないケースも多いです。


そういうのやめましょ。

もう十分頑張ってるので、外に相談したりヘルプを出しましょう。


今僕は、そういう状況になって、苦しいけど笑っている今まで出会ったお母さんたちの顔を思い浮かべて書いています。
精神的にはギリギリで、マスクを取ると泣きそうなのに、子どもの前では笑っている。

またこのような境遇にいるお母さんたちがいることを知ってもらい、少しでも負担が減っていくといいなと思います。

母子分離不安を適切に緩和していくプロセス

ここからは、僕たちのようなサポートする立場の人たちがどのような行動を取ればいいかを書いていきます。

あくまでBranchでのやり方ですが、親族の方や近くにいるご友人でも参考になるかもしれませんので。

まず、前提としてBranch room(代官山にある教室)では、

①各コマ、子どもは1人ずつで、他の子はいない
②保護者は教室内に入ってきても、外へ出ても自由(子どもが不安に思えば教室内にいる)

という状況です。

そんな中、自分たちがやっている母子分離の手続きは、大きく下記の3段階です。

1.担当者が子どもから信頼を得る
2.徐々に「お母さん飲み物買ってくるね」などで教室を離れる
3.2が大丈夫だった場合に、時間を伸ばしていく


1.担当者が子どもから信頼を得る

子どもの支援に携わる人たちは、これが最も難しいことだと感じられるかもしれません。

しかしBranch roomは「子どもたちのやりたいことをサポートする」というルールの下で運営しており、この段階で失敗したことはありません。

ゲームであろうと、動画であろうと、子どもがやりたいことをなんでもサポートします。

先日遊びに来てくれたお子さんの例を紹介します。

入室時から外に出るまで、お母さんには話しかけるのですが僕には基本的に話しかけてきません。「最初は話さない」と自分にルールを課しているか、外の人と話すことにハードルが高いお子さんです。

それでも最後は「ねぇママ、次はいつここに来れるの?」と言って帰っていきました。

そのときに僕がしていたことは、

・子どもが列車を並べていたら、次に並べたそうなレールを集めておく
・黄色いレゴで壁を作っていたら、黄色のレゴを集めておく、壁も作っておく
・ピタゴラ装置のゴールづくりをしていたら、ゴールになりそうな素材を子どもの近くに置いておく

などの行為です。
声もかけながらですが、基本的に返答はありません。
自閉症スペクトラムなどの傾向がある子が、呼びかけに返答をしないことは割とよくあります。なので気にせずに、子どもの行動をよく見て次にやりたいことを察することに注力します(このお子さんの場合は、自閉症ではありませんでしたが)。

こういった「子供のやりたいことをサポートする」という行動を地道に積み重ねていくことで、徐々に子どもからの信頼を得られるようになります。

2.徐々に「お母さん飲み物買ってくるね」などで教室を離れる

1を何回か続けて、信頼を得られてきたと感じたら、

「飲み物買ってくるね」
「隣のカフェにいるね」
「○○が家で使う文房具買っておくね」

などの理由をつけて、保護者の方に教室の外に出てもらいます。

ほとんどの場合は保護者の方や僕らの気にしすぎで、子どもはもうあまり気にしていないことが多いです。


2回目のプログラムからすぐに2の段階に行ける場合もあれば、ここまでに半年以上かかる場合もあります。変化のペースはお子さん次第ですので、焦らないことが大切です。

3.2が大丈夫だった場合に、時間を伸ばしていく

そして、徐々に徐々に時間を伸ばしていきます。
たいていの場合は1がしっかりしていれば、特に問題なく分離していけます。

でも、10回に1回くらいはお母さんを探しに外へ出てしまう子もいるので、最初は飲み物を買って10分くらいで帰ってくるなどの短い分離から始めます。無理に長い分離をしないことが重要です。

この1−3の過程を経ることで、お母さん以外の人と初めて関われるようになります。逆にいうと、お母さんは子どもを産んでからほぼ初めて、1人の時間を作れるようになります。

この記事を読んでくださっている方の中には、似たような経験をしているか、同じ状況に陥っている方も少なくないかと思います。

大変だと思いますが、「この状況は長くは続かない」ということだけはお伝えしておきたいです。

ほとんどのお子さんは、小学校高学年くらいの年齢までに1人で遊べる何かを身に着けていきます。それはパソコンであったり、ゲームであったり、学ぶものであったり、子どもによってさまざまです。

もちろんお母さんがいてくれた方が子どもは安心するとは思います。しかし24時間子どもに付きっきりな時期はそこまで長くありません。

また、似た状況にあるお母さんのご親族やご友人などがいらっしゃいましたら、上記を参考にしてもらい、少しでもお母さんが1人になれる時間を確保できるようにしてもらえたら嬉しいです。

 

■参考記事を記載します。

・子どもと関わる保護者も、ゆったりと自分をいたわるヒント
https://www.covid19-accessibility.com/todokeru/hogosya-0409
・子どもが安心する、日々のコミュニケーションのヒント
https://www.covid19-accessibility.com/todokeru/kodomo-communication-0610
・自分の「からだ」や「こころ」のサインと付き合うヒント 「新型コロナウイルス『からだとこころのワークブック』-アルハから大切なあなたへ-」
https://www.covid19-accessibility.com/todokeru/aluha-workbook-0716

 



 

 

 

 

ライター中里祐次

Branch代表。早稲田大学卒業後、㈱サイバーエージェント入社。子会社の役員など約7年勤めた後にサイバーエージェントから投資を受ける形で独立。自分の子どもがレゴが好きで、東大レゴ部の方に会いに行った時に目をキラキラさせていたのを見てこのサービスを思いつきました。好きなことは、漫画やアニメを見ること、音楽を聞くこと、サウナ、トレイルランニング、かなり多趣味です。Branchの子どもたちに鍛えられて子どもが好きな遊びはたいていできるようになりました。